帰属する属帰るすす帰属する
部屋は暗い。ブラウン管の光でかろうじて手元が見える。そんな中私はテープをはさみで切っていた。映像用の磁気テープだ。細かく切ったものを輪っか状にしてセロハンテープで止め、それをカセットに戻してからプレーヤーに入れて再生した。画面に映るのはつぎはぎの歪んだ映像。一瞬、爆撃機が撃墜される様子が、次は赤いバイクが走り出すシーンが、それからもういくつか歪んだ映像の断片が表示されて最初に戻りループした。
嘔吐のような映像を何週か見た後、プレーヤーからカセットを取り出して布団の上に放り投げた。気に入らなかった気がする。しばらく静止したあと私はすぐ別のカセットを取り出して分解し始めた。SFアニメ映画から、冷戦ドキュメンタリーから、マイケル・ジャクソンのMVから無作為にテープを切り出しては、時には裏返し、気が向けばテープにシワを作り、互いにくっつけていく。ちょうどいい長さになったら輪っか状にしてカセットに戻した。
突然部屋に光が漏れこんだ。振り向いてみれば、ドアが空いて顔をのぞかせるあの娘が見えた。パジャマに近い恰好だと思う。彼女は私を見つけると音もなく私のそばまでやってきた。分解したカセットや床に散らかった黒い磁気テープを観察しているようだ。
「なにしてるの?」
まじまじとそれらを見つめた後に彼女は私に聞いた。初めて声を聴いた。見た目同様、かわいい声だ。しかし、肝心の答えに私は詰まった。
「その」
なんと言えばいいんだろうか。自分でしている事なのだから解りそうだが。
「わからないんだ」
それが精いっぱいだった。結局私は何をやっているんだ?何処で?答えられない焦りと申し訳なさで少しばかり震えた。緊張もあったかもしれない。でも。
「大丈夫だよ。大丈夫。」
彼女はそう言って肩をさすってくれた。
なんだか泣きそうになった。
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