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SAINT G

帰属する概念

 月が空高く登る頃。住宅街の隙間、小さな公園に紺の制服を着た彼女は居る。いつもみたいに私に優しく笑いかけた。

 彼女はまるで......春の日、風に乗って運ばれてきた名も知らぬ花の香の様で、声をかけでもしたらすぐに消えてしまうのだろう。

 耐えれず、私は歩み寄りその幼く可憐な体に触れようと手を差し出す。すぐに手の届く距離——しかしいつもそこで私は地面に崩れ落ちる。

 伸ばした指先から順番に眠りに落ちていくように、そしてそれはすぐに意識に到達する。

 まどろみの中私は彼女を見上げる。彼女が私を見下している。薄れる視野の中でもわかる。行ってほしくない。目の端にとどめるだけでもいい。

 そんな渇望から私は必死に彼女の足を掴もうと試みる。そんな乱暴にしたら崩れてしまうに決まっているのに。そうやっていつも掴み損ね、いつもそこで私の意識は残酷にも途絶えてしまう。甘い眠りが世界を覆う。

 意識が途絶え、眠りが訪れるのはなぜか?残る意識の数秒、最後に私はそう考えてはいつも正しい答えを出す。


 此処を去る為、起きる為。

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