けものフレンズ「たんぺんしゅう」
あおぞら
大きな耳に憧れて
「わぁー!棚がいっぱいあるね!」
ゆうえんちの片隅にぽつんと残ってた建物。辛うじて開いたガラスで奥が丸見えな扉の先に広がっていたのは、沢山の棚とところ狭しと並べられた様々な商品だったもの。それはフレンズを象ったぬいぐるみだったりフレンズの絵が貼られた便利そうな道具だったりした。
「えぇっと...「ばいてん」かぁ...多分ここでヒトはフレンズさん達の商品を買ってたのかな」
「てことは私達も買えるのかな?私選びたーい!」
サーバルちゃんは我先にとお店の奥に引っ込んでいって、一つか二つ間があいてから手に不思議なものを持って戻ってきた。彼女の手にあるそれはとても見覚えのある色、形で。
「あれ...さ、サーバルちゃんの耳が取れてるよ!?」
「私のはちゃんとここにあるよ!奥の方にあったんだー」
忘れないでと言うかのように耳がぴこんと立つと、同じような耳らしきものは動かずただただ三日月みたいに曲がった所に縫い付けられていた。
「もしかして...かちゅーしゃ、かな」
「へぇー!頭につけるの?」
元々ある耳を折るようにしてから更にかちゅーしゃをつけると、やはりこの耳はサーバルキャットの耳を模したものと分かりそれを見てあまりの完成度に少し驚いた。
「うーん...耳がくすぐったいや、はいかばんちゃん!」
むず痒そうに先がぴくんと動いた耳と全く動かない耳。僕は見とれて少し遅れたけど、かちゅーしゃを受け取った。そして太陽みたいな色と黒いグラデーションが綺麗なその耳を少しはねた癖っ毛の上からつけた、軽く首を振ると力なく動きに合わせて揺れた。
「お揃いだね!皆に見せてこようよ!」
やっぱりぴんと立った耳が視界に映った。サーバルちゃんは僕の手を掴んで外へ行こうとぐいぐい引っ張る。
でも、僕はそっとかちゅーしゃを外した。
「やっぱり大きな耳には憧れるけど...作り物だから。だったらサーバルちゃんのお耳を見ていたいな」
一瞬耳に針金が通ったみたいに固まったけど、すぐに力が抜かれて「そ、そーかな?...は、早く戻ろ!皆待ってるよ!」と扉に向かったサーバルちゃんの動きに合わせて揺れる。
そして、髪に隠れてたサーバルちゃんの耳が赤くなっているのが見えた。
「待って、サーバルちゃん!」
黒く染まった指で横の髪を耳にかけて、彼女の背中を追い掛けた。
□■□■□
お耳と尻尾フェチなかばんちゃんだけど、自分が作り物の耳や尻尾をつけるよりもフレンズの生き生きとした耳と尻尾を見ている方が好きなのではないか、そんなお話でした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます