Eclipse Requiem
華飴
誰が為に鐘は鳴らされる
「…姉様」
墓に花を手向ける。今にも雨が降りそうな空の下、そこにいるのは一人の少女。
手を合わせ、目を瞑り今はいない姉に語りかける。
私のことをかわいがってくれた、美しく聡明なあの人はもういない―。
少女は零れ落ちそうな涙を拭った。
私なんかに当主は務まるのだろうか。けれど、彼女の為にも絶対頑張ると彼女は心の中で思った。
気付くと、後ろには一人の青年が立っていた。
「エリーも来ていたのかい?」
片手には花を抱え、もう一方の手には傘を携えていた。
そして、そのまま墓にその花を手向けた。
少しの間、手を合わせた。
「君は…今も見ているのだろう?…君にはずっとこの世界を見ていて欲しい」
そう呟くと、ゆっくりと目を開けた。
「クレイスも来たのね」
「エリーはよく来ているだろう?僕なんてたまにしか来ないからね」
クレイス、と呼ばれた青年はにこやかな笑みを浮かべた。
「どうしてもお姉様のことを思い出しちゃうとね、ここに来ちゃうのかしら」
「エリーは優しいな……そこのところはメイに似なかったらしい」
「もう。姉様が聞いたら怒るわよ」
そう喋っていると、空からポツポツと雨が降り出した。
「おっと、雨が降ってきてしまったな、弱いうちに帰るとしよう」
「そうね」
「…エスコートが必要かな?」
「……クレイス、貴方って人は」
「冗談だよ、それじゃあ」
クレイスは傘を半分こちらに傾けた。
「行こうか、エリー」
「…あ、待って」
エリーが立ち止まり、後ろを振り返る。
「行って来ます、メイヴェル姉様」
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