すみませんが彼女のフリは不可能です
田西 煮干
プロローグ
「ごめんなさい、私付き合ってる人がいるから…」
そこから先は言わない、言わないでも察してくればいいんだけど。
「でもそんな話聞いたことないけど、いつもだって友達と遊んでるだけだと思ってたんだけど…」
そんなこと聞かないで諦めてくれないかな、私の答えは変わらないんだから。
「ごめん、誰かは言えないんだけどそういうことだからごめんなさい。」
正直これからどんなことがあってもこの人のこと好きになることはないだろう。
「そうか、でもまた友達として話してくれたりすると嬉しいかな。」
「う、うん…」
はぁ、もともと友達だった記憶がないんだけど。絶対しゃべらないから、学校で見かけても全力で気づかないふりかな。
見てわかったと思うが、私にとってはいつもと変わらない日常である。告白されることは当たり前、けど好きな人なんて誰もいない。なんかよくいるキャラみたいになっちゃってるな。自分が好きでもない人と付き合えるわけないでしょ、なんで俺ならいけるって思い上がっちゃうのかな。いちいちこれからのことを考えることも面倒だから断ったら早く諦めて欲しいのに、だから架空の彼氏のうわさでも流してそういうの減らそうと思ったのになぁ。反対にあだになり始めちゃったよ。最近じゃ女子友達にも「彼氏(笑)」なんて言われちゃうし。
だから最近では誰か手ごろな奴にでも名前だけでも借りれればなって思ってるんだけど、いかんせん私に好意ある人には頼めなるはずもなく、ちょうどよい人がいない。どうしよっかなー。
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なんか最近クラスの雰囲気が悪くなってる気がする。なんかこう、うまく言えないんだがぎくしゃくしている気がする。あまりクラスに興味がない俺でも感じているのだから、ほぼ全員が分かっているだろう。
「いやー、なんかあれだよね、今日…」
「う、うん・・・」
クラスのカーストトップもあの様子だ。話が続いていない。
まあ俺としてはいつもより静かに授業を受けられるからありがたかったりもするんだけど、でも先生すら空気が重いことを察して授業やりずらそうだし。
「ほかに連絡はないか。・・・・・なら今日はこれで終わりだ。気を付けて帰るように。」
最後のホームルームも終わり、ようやく帰ることができる。こんなに雰囲気が悪いところからは早くおさらばしたい。
「今日はこの後どうする?どっか遊びに行ったり・・・」
「ごめん、今日予定あるから」
「うちも今日は…」
「そっか…」
どうやら遊びの予定はキャンセルになったらしい。よくあんな大声でしゃべるなぁ、聞きたくもないのに聞こえてしまうだろう、席だって離れているというのに。
クラスの中で一番にバックに教科書やらなんやらを詰め込み終わり、ちょうど前の扉に手をかけた時だった。
ガラガラガラ―
俺が触れる前に空いたドアからはさっき解散を告げたはずの担任の姿があった。
「悪い悪い、今日席替えしなきゃいけなかったな。まだ誰も帰ってないよな~、うし大丈夫みたいだな。じゃあ一旦席戻れ~、さっさとやるぞ」
「おー」「よっしゃー」
なんでそんなに喜べるのか理解に苦しむ。たかだか席が変わるだけだろうに。
むしろ今の席は静かに過ごせていたのだから、変わらない方がありがたいというのに。
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本当に困る、神様のいたずらというものには。なぜ静かに勉強したいと願った人の隣にトップカーストを置くなんて・・・。安心してノートを開くこともできないじゃないか。
一番後ろの席で両隣にさっきまで会話していたカーストトップの女子二人。
仕方がない、あまりやりたくはないが「目が悪いので前の席にしてください」を使うしかない。
「先生すみません、目が悪いので前の席に行きたいんですけ」
「あれ?お前のそれ伊達眼鏡だろ、視力2.0あるの知ってるからな。」
・・・・・担任がしっかりと生徒の視力を把握しているなんて思わなかった。
詰んだ?
「なんかごめんね、私と隣の席嫌だった?」
・・・・・・やっぱり詰んだな。
「いや、ただ前に行きたかっただけだから気にしないでくれ。」
ぼろが出ないうちにさっさと帰ろう。……はぁ疲れた。
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なんか急に席替えになったけどまあ私にはそんなに関係ないかな、それよりもクラスの雰囲気の方が大事だ。原因は私だ。どうやら昨日の告白が広がってしまってそれがへんな噂になってしまったようだ。私としてはいつもとあまり変わらない断り方だったのだが、昨日の奴はどうやら私の彼氏について吹聴したらしい。今までの奴は黙っててくれたのに。
それに加えてどうやら昨日の男子は女子からの人気が高いやつだったらしく一部から反感をかってしまっているらしい。人から聞いた話で私自身は気にしていないように振舞ってはいるが、いつものメンバーも変な雰囲気を察してしまって遊びに行くの断られるし、はぁ。
席替えも終わり私の席は真ん中の列の一番後ろになった。前の方になってしまうと先生に対して常に優等生のように振舞わなくてはいけなくなるから正直子の後ろの席というのはありがたい。隣の席はよく知らない男子とあまり話したことのない女子だった。本音を言えばだれでもいいから話せる人を、なんて望んじゃうけどまあ高望みはするものでない。
せっかくだし軽く声をかけておこうか…
「先生すみません、目が悪いので前の席に行きたいんですけ」
「あれ?お前のそれ伊達眼鏡だろ、視力2.0あるの知ってるからな。」
え、何この人、席移動しようとした?目が悪くても私の隣から離れようとする男子がいるなんて、きぃぃぃーーー。 なんてね。
さすがにそこまで自信過剰ではない。確かこいつそれなりに頭良かったし、前に行きたかったのかもしれないからね。ハンカチ噛みながら引っ張るなんてそんな行為はしない。はずかしいし。
「なんかごめんね、私と隣の席嫌だった?」
まあとりあえずこう言っておけば悪い返事は来ないだろう。
「いや、ただ前に行きたかっただけだから気にしないでくれ。」
こちらに顔も向けずに言い放つ。けれど建前だけでもそう言ってくれたのでこれからはそんなに意識しないで済むだろう。
まあしばらくはうわさが広がってくれたおかげで告白してくる人もいなくなるだろう。それはそれで幸いだ。その間に適当な設定でも作った彼氏像でも作っておこうかな、信ぴょう性があればいいわけだし。どうしよっかなー。
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ようやく学校も終わり、家にたどり着く。長い長い階段を登り、ようやく玄関だ。
「ただいま」
「おぉ、今帰ったか。急で済まんが話があるから着替えたら来てくれ」
俺は知る由もなかった。なぜ俺が呼ばれたのか、そしてこれからの面倒な日々を…
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