(仮題)恋愛相談室
@kr12332
恋愛相談室ってさあ
――うちの高校には恋愛相談室なる噂がある。
曰く、恋に悩みし風見原高生が強くその悩みを解決したいと思ったときに時間や居場所を関係なく現れて、その恋の悩みを瞬く間に解決へ導くと。そして、その部屋を出たら恋愛相談室の中でのことはきっぱりと忘れてしまい、ただ自分がどうすればいいのかという導きだけが記憶の中にあるとかないとか。
口さがない匿名掲示板やSNSで言うところのスイーツ()やら恋愛脳()やらの人たちがこんなのがあったら自分の恋愛上手くいくのに、と妄想の果てに創り上げた「僕の最強の恋愛必勝法」みたいなもんが風の噂としてべっちょりと染み付いてしまったのだろう。
そのせいで僕のようなスクールカースト低位の人種でさえ知ることとなった学校の噂である。普段は学校内でみんなが知っているような噂ですら知らないのだから、これは異常事態なのだ。
それにしても流行る噂が恋愛相談室とは。オタクコンテンツたちが軒並み主人公にやたらと都合の良いものが増えたように、学校に蔓延する迷信だって自らたちに都合の良いものが増えたのだろうか。走り出す人体模型図とか無人なのに鳴り出す音楽室のピアノとか本当に起こっても誰得だよって感じだし。その点、恋愛相談室なんてあれば生徒は、いや独身教師だって喜んで利用しそうだ。
いや、でもオールドタイプの良く分からない学校の怪談も、よくよく考えたらスクールカースト上位陣は楽しそうに利用していたに違いない。噂を流布してきっと自分たちの日常生活を彩る舞台装置として役立てていたのだろう。クソチャラ男どもが女の子を誘って肝試しに行こうぜなんて声を掛けて夜中の学校でイチャコラ青春でもするんだ。あまつさえ人体模型が走り出したなら、勘違いクソチャラ男はそれを意中の女の子へ男を魅せるチャンスに変換してたろうし、そのまま無人だろうとピアノが演奏されたなら素敵なBGMとして男女の仲を深めていたんだ。きっとそうに違いない。なんてけしからんことなんだ。
僕の頭の中のスクールカースト上位陣が暴走したので閑話休題。恋愛相談室は時間や居場所を無視して当人の目の前に現れて、恋の悩みを解決するという。なるほど。恋の悩み云々の件を除けばまるで怪談のようだ。なんなら僕の現状がまんま当てはまる。
僕はついさっきまで教室で現代文の授業を受けていたはずだし、まだ三限目で昼前だったはずだが、どういうことだろうか。窓から差し込む陽射しは夕暮れの赤で、そして僕が立つこの場所はなぜか廊下。そして目の前の扉の上には分かりやすく「恋愛相談室」の文字が。
べべっべべべっべべべべべべべ別に恋の悩みを抱えているわけじゃないんだからね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます