俺はただ自分じゃない別キャラになりきれる超本格VRゲームで遊びたかっただけなのに
とゅっちー
プロローグ
グリム・トゥーフォール
グリム・トゥーフォール
そこそこVRゲームが人気になり、VRというジャンルが確立した頃に本格派VRゲームとして発表されたゲームソフトだ。
それまでのVRといえば例えばアイドルキャラのライブに行っているような感覚になれるVRやキャラと一緒にお風呂に入っているかのような感覚になれるVRというただ目の前にいるように見えるVRが主流で自分が参加してるという感覚はあまりなかった。
しかし「グリム・トゥーフォール」は自分たちがほんとにゲームキャラの一部として参加してるかのように感じるVRらしい。テレビでやってたCMだとゲーム中に自分で動かした手足でゲームのキャラも動くようだ。
自分はやってないけどテストプレイで実際に体験した人はみんな「初めて二次元に行けた」とコメントしていて、そんなにゲームが好きじゃない僕もちょっとやってみたいなと思うほどの魅力があった。
だからなんとなく通ったゲーム屋の前でゲーム機とVRと一緒にソフトを予約すれば1万円でさらによりVRをリアルに感じられる付属品もセットで付いてくるチラシを見て運命を感じた。
1万円なら使ってもまだお小遣いは余る。そっこーで家に帰ってから台所に駆け込んだ。
「ママ、お小遣い使ってもいいかな?」
「まあ! 生まれてからおもちゃを強請ったことのない翔ちゃんが初めてお小遣いを使いたいだなんて! ママ嬉しいわ。ええ、一緒に買いに行きましょうか」
「ありがとうママ」
ママと一緒に買いに行くのは断って豚の貯金箱をたたき割った。たくさんの小銭とお札で机の上にいっぱいになったけどそれを直さずあるだけのお札を握りしめてポケットに入れる。消費税とか万が一足りなかったときのために自分で数えても5万円ほどのお札がポケットに入った。
「翔ちゃん、気を付けて行ってらっしゃいね」
心配性だなと思うママに行ってきますと声をかけてゲーム屋さんに走った。
3か月後、念願のゲームソフト「グリム・トゥーフォール」が発売され、朝一でゲーム屋さんに買いに行った。予約していたおかげですんなり買えた。
土曜日の今日、パパとママはラブラブデートに行っているから僕はこのゲームを堪能できる。多分、ママが気を使ってくれたんだと思う。
箱の中には起動時までの操作方法や気分が悪くなった時の応急処置が書かれていたけどゲームの内容についてはまったく書かれていなかった。一応ゲームの箱の裏にスクリーンショットがあってアクションものということはわかる。
「さようなら醜い僕、こんにちは華麗なる私」という言葉が妙に引っかかったけど気にせずVRを頭に乗せる。
どんな自分になるかはランダムで決まるらしく、出来れば今と違う自分、ゴリゴリでムキムキなキャラになりたいなと思って目を閉じた。
「ゲームスタート!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます