黒と白の密会

カゲトモ

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「ん」

 最近巷を賑わせている噂話の一つに、浮気、なんてものがある。浮気、あるいは不倫。心に決めた人がいながらも、他の相手に心を寄せる行為。結ばれてはいけない相手を想う行為。

それも文化なんて言われていたこともあるようだけれど、不貞は一体どうなのだろう。

 なんて。

 出来るだけ音を立てないように鼻から息を吸って吐く。この空気を壊すわけにはいかないから。

 俺は見てしまった。一部始終を。絶対に結ばれてはいけない、結ばれるわけのない二人が愛し合う様を。

 にゃぁん。

 

 朝一に小雨が降ったにも関わらず、日中は先日の寒さが全くの嘘のように暖かい。春分の日は凍えるほどの寒さだったが、暦通り春はもうすぐそこまで来ているのかもしれない。

 こんなに天気の良い日はいつもより遠回りしたくなる。頬を掠める風は少し冷たいのに、たっぷりと注がれる陽の光はとても暖かだから。春独特の何かが始まりそうなワクワクに溢れている感じがして、好きだ。

「ん~」

 だから気づかないうちに鼻歌なんか歌っちゃったりして。だって周りに誰も居ないから。両手に下げた荷物をリズミカルに揺らしながらそこで視線がぴったりと止まってしまった。

「あれ・・・」

 見たことのある、いや良く知っているあのシルエット。もしかしてあれって。

 そう思って見ていると、そのシルエットの傍にこれまた知っている顔を見つけてしまう。おいおいマジかよ。この二人って、そう言う関係だったの? 俺、知らなかったよ・・・

 なぜか胸に冷たい風が吹いたような気がした。振られてしまった、みたいな。そんな気持ち。

 知らなかった、あの子がアイツと仲が良いなんて。

 俺の大好きな猫ちゃんがっ・・・!

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