ハッピー・ライフ

トチイ 青

第1話 春の息吹3月23日(金)

 陽射しが暖かくなって、花粉さえ無ければ絶好の自転車日和。

思わず「春だー! 」って、ルンルンと行きたいほどだけど、それを邪魔する花粉は強敵としか言えない。


 「花粉のバカヤロー!!! 」


 叫びたいけど、そんなことしたら余計に花粉を吸って症状が酷くなるだけ。

 

 くしゃみ連発で、涙ぐじゅぐじゅ。


 自転車漕いでも、生憎とくしゃみを堪えるのと目の痒みを我慢するのに大変。なので、ちょっと憂鬱。


 でも、もう少しで家に着くから頑張るぞって、自分で自分を励ました。そうでもしなければ、やってられない。


 そんな中、不意に聞こえた老夫婦の会話。


 「ねえ見て、凄いわよ!」


 えっ!? 凄いって? いったい何だろう?


 好奇心が、刺激された。(花粉が辛くて、ちょいと現実逃避したかったって謂うのもある)


 思わず気になって、老夫婦の視線の先に目を向けた。(注・余所見運転は危険なので、勿論、軽く止まって)


 視線を辿った先にあったのは、つくし。


 但し、そのつくしは、老婦人の言うように確かに凄かった。何が凄いって芽を出している場所!


 アスファルトとコンクリートのわずかな隙間に生えていた。 


 植物の生命力に驚かされると同時に、本当に春何だと(当たり前なんだけど)、なんだか嬉しくなった。


 つい、他にもあるかな?って、角で何時もより念入りに止まったり、自転車の漕ぐスピードを落として緑色が見えないかチェックしたりして戻った。


 そのおかげか、辛い花粉症も、少し緩和された気がした。


 それが、今日の私の小さな幸せな出来事。ハッピー・ライフ。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る