第4話 公理その1
~3年後~
「1450番、ヒロシ君」
「はい」
「1451、ノア君」
「はい」
俺の名は品川翔輝、改め1451番のノアだ。この世界では生まれた子供の名前を親が決め、それに加えて所属がわかるように特定の番号が当てられて人が区別される。俺の場合”ノア”というのがこの世界の親が俺につけた名前で、学校内での識別用番号が(第)1(学年で出席番号が)451(の人間)である。
「では授業を始めます。確認ですがこのクラスは転生者対象コースの数学科グレード9となります。受講するクラスと相違ないですね?」
この世界では受ける教育のレベル分けが、元の日本で言う所の小学校1年から1年ずつ数えて大学4年までを”グレード〜”という名称で呼んでいるそうだ。つまり、俺は今ちょうど7歳にして中学三年の数学を習っているということだ。飛び級といえば飛び級だ。
「間違いがないようでしたら、今から電子教材用のIDとパスワード、および試験受験用パスワードの交付を行います。それが終わったら自習する人は自習室へ行って貰って構いません。授業を受ける方はこのまま教室に残ってください。では、配ります。」
”飛び級”という言葉だけ見れば俺はこの世界で早速転生チート的能力が開花しているように見えるかもしれない。実際にはそうではないのだが・・・。
「えーと、はい、ではみなさん各パスワード等を全て受け取ったようですので一度解散になります。」
ガララ
「・・・」スタスタ
クラスメートのうち数名は先生のアナウンスが終わるなり無言で教室を後にし、隣にある試験準備室へ向かった。彼らは多分前世で数学の勉強をしっかりやっていた理系の人間なんだろう。
隣の席の人から声をかけられた。
「えぇと、すんません。あんたも数学できないのか?わしゃ前世では原博、この世界ではイディってよばれとるんじゃ。よろしくのう。」
「・・・えぇとイディさんですね。初めまして、前世では品川翔輝で、今はノアって呼ばれてます。どうもです。」
「あ、あんたらもやっぱし日本人なんやな?」
横から急におばさんっぽい口調で、いや小学生の女の子の声ではあるのだが、会話に割り込んでくる娘がいた。
「あたしゃ、ズーハンって呼ばれてるんだけどさぁ、日本では鈴木千代子っていうんだよぉ、全くなれないったらありゃしないよ、あっはっはっはっは」
「は、初めまして。どうも。」
「俺も入れてくれ入れてくれ、俺の名前h「あたしは朱美って前は呼ばれt「人が喋ってる時に割り込むなや!」」
「なんですか!あなた!」
「そりゃ、こっちのセリフじゃ!」
「ま、まあまあ落ち着いてくださいよ」
今教室に残ってるこの人たちは前世で日本人だったけど中学3年生の数学にはまだ自信がない人達だ。斯くいう俺もそのうちの1人なんだがな。今の会話の喋り方が俺の世代より少し古臭いところから推察するに、多分この人たちは主におじいさんおばあさん、おばさんのときに地球で息絶えた人達なのだろう。そしてこの世界に転生してきた人達。
そう、その事実は俺がこの世の4歳の時に転生者案内用ホームページの概略で知ったこの世界の公理その1
「地球で死んだ人間は例外なく、この世界に転生する」
の示すところだ。
俺を含めこの世界にいる人間は前世の地球上でもう死んだのだ。そして蘇ったのだ。
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