特別な自分の異世界チート

@ZuboshiUmeboshi

第1話 前世の未練

 俺の名前は鈴木翔輝。前世では26歳の時自殺した。F欄より少し上のグレードの大学に入ったものの、就職活動は全敗。何もかもが嫌になった。そのあとは酒にタバコにパチンコに溺れ、気づけば後戻りできない生活水準まで落ちぶれていた。


 もっといい家に生まれていたら。


 もっとイケメンに生まれていたら。


 もっと前から勉強していれば。


 きっと26歳の俺は死ぬ前と違って就職できて、仕事を頑張れて、恋人ができて、金が貯まって、家族といるのが楽しくて仕方なくなって、このまま時間が永遠に続けばいいなと思えたんだろう。


 そんな甘い世界は俺の前には現れなかった。辛かった。日々落ちぶれていく自分を認められなかった。どんな手段を使ってでも目の前のストレスフルな時間を短くしたいと思った。


 そんな俺に、死んでからというのもどうかと思うが、やっと運気が回ってきたらしい。


 現世をさよならした後、不思議な声が聞こえてきた


「あなたはこれから別の世界に転生します。記憶を引き継ぎますか?」


 まさかと思ったが、きっとそうなのだろう。よくある異世界転生のくだりで間違いない。


「はいっ、引き継ぎますっ!」


 やったぞ。俺はやったぞ。この記憶を引き継いで別世界に生まれ変わるのだ。それは異世界での人生経験が他人のそれを凌駕するすることを意味するはずだ。今の俺には前世で得た計算能力や様々な科学知識を持っている。これは異世界で言えば天才的能力となるだろう。二度と前世のようなヘマはしないとここに誓う。酒やタバコをやめることも、努力を怠らないことも誓おう。


 俺は次こそ勝ち組になる。


 次第に意識がかすみ始め、俺は次の人生へと進んだらしい。


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