別にどうってことはない性転換

大海の蛙

第1話

別にどうってことはない。

些細な男子中学生の悩み。今となっては、ね。単純な事だ。

‥‥‥が止まらなかったの。



僕はそれをする度に自己嫌悪に陥った。むしろ自己嫌悪までの一連の流れが癖になっていたのかもしれない。それでも一度として満ち足りた幸せを感じたことはなかった。

いつの夜も変わらなかった。日付けが変わる頃。自分の部屋で。イカ臭い、というのだろうか。とにかく嫌悪感を引き立たせる臭いの原因をティッシュで拭き取りながら考える。今日我慢出来ていたら、僕は幸せを感じたのだろうか、と。僕は幸せになりたいなんて願ったこともなかったが、自分を嫌うことを甘んじて受け入れていたくらいだからその時の心はとても荒んでいた。

時々、何の気まぐれか三日か四日程のインターバルを作ることがあった。しかしそれは我慢したのではなく、飽きたからだった。

飽きただけだったのでインターバルの後は当然のようにバリバリの現役に復帰した。

結局、一連の流れは僕のルーチンワークと化して、それは中学校卒業後の春休み頃まで続いた。

しかしこの習慣はダラダラと続いていた割にはパッと止んでしまった。きっかけはただの気まぐれだった。よく覚えている。春休みが始まって八日たった頃だ。僕は私になろうとした。これは社会人としての自覚が芽生え始めた訳ではない。正確に言うと、僕は結果的に女性になろうとしたのだ。

ただの思いつきだったから方法は適当だ。股間のそれはただの飾りだと自分に言い聞かせたのだ。‥‥‥それだけ。ただこんな方法でも効果はあった。しかしこんなものは副作用に過ぎない。

本来の目的は女性になることだ。僕はこのことを忘れていた訳ではないが事の側面に気を取られていたようで、意識の変化に気づいたときはハッとしたことを覚えている。

この辺りの変化は日記に記してあるので詳しく知りたいのならそちらを見て欲しい。

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