第十六話 「始めてのスキル獲得」


インスタ映えしそうなカフェを出て俺とオーロラは、先ほど話していたスキルを習得する為に、”始まりの草原”へ向かって歩いていた。

どうしたんだろう、オーロラの顔がやけに赤い、熱でもあるのだろうか?


「ユ、ユウタさん……」

「ん? なんだ? 急に」

「あ、あの……ユウタさんはアルレナの事好きなんですか?」

「うん。好きだよ」

「カァ!!」


謎の叫び声を上げ、オーロラはあしをおり俯いて落ち込んでいる。

それに対し、俺は、すかさず口を開いた。


「仲間としてね」

「え?」

「そんな、アルレナはまだ15歳の子供だろ? そんな子を恋愛対象となんて思ってねえよ」

「へ、へえーそうですか……! べ、別に興味なんて微塵もなかったですけどね!」

「いや、聞いてきたのお前だからな。しかも、俺が好きって言ったら超落ち込んでたろ」

「し、知りません!」


やや照れながら、俺を横目で見つめてくるオーロラ。その目は何処か嬉しそうであった。


女と言う物は、よくわからん……。いきなり怒ったりいきなり優しくなったり。

俺の中に存在する世界七不思議の一つだな。


「着きましたよ、ユウタさん」

「もう着いたのか、思ったより早かったな」

「では、スパイに役立つ魔法とスキルを教えたいと思います!」

「うん、頼む」

「んーそうですねぇー、スパイと言えば……。”スモーク”とか、”フラッシュ”とかですねー。他にはー”潜伏スキル””第六感スキル”とかですかねー」

「いっぱい、あるな。それ、全部教えてくれ!」

「はい! わかりました! まあ、ユウタさんなら直ぐ使える様になれますよ!」

「おお、そうか」

「まずは、潜伏スキルからです。この、スキルは自分の気配をかき消すスキルです!」

「ほおー」

「まず、スキルの覚え方って知ってますか?」

「いや……知らない」

「ですよねぇー、まあ。そうだとおもっていました」

「え? あ、うん」

「まず! スキルを覚えるには、役職カードを使用します! もって、ますよね?」

「うん、あるけど」

「で、その役割カードの右下に書かれている”スキル獲得”と書かれた欄がありますよね?」

「あ、ああこれか」


オーロラの言う通り、役職カードの右下にはスキル獲得と書かれた欄があった。

なんか、青白く光っていて、鍵のマークが表示されている。


「そして、青白く光っている。所に指をかざして下さい!」

「こ、こうか?」


光っている所に、人差し指をゆっくりとかざす。

その途端――鍵マークが解け、”獲得可能スキル一覧”と表示された。

上にスワイプしていくと様々なスキルが現れていく、


「はい! そうです! おお、やっぱり全て獲得可能でしたか!」

「これがこの世界に存在する全てのスキルか」

「はい、そうですよ! なんと、その数一万!」

「一万か……、てか。そんな、膨大な数からスパイに使えるスキル探すの大変じゃない?」

「はァ……、なに言ってるんですか。普通の人はこんなにスキルが表示される事はありませんよ」

「ああ、そうか……」

「それに、スキルを獲得するにはレベル上げ、魔力値増強、経験、など様々なが必要なんです! なのに、ユウタさんは……今更ですが、チート過ぎて呆れますね」


そう言って、オーロラは呆れた表情ではァと軽い溜息をついた。


「じゃあ。この、一括獲得でいいのか?」

「まあ、いいんじゃないですか? どうせ、後から全部覚えるだろうし……」

「え……まあ」


”一括獲得”を押すと、表示されているスキルが全て消え、『スキルは全て習得済み』と表示された。――なんだろう、RPGゲームに何処か類似しているな。


――【称号 スキル制覇】――


ん?なんだ?称号?


「なあ、オーロラ。称号ってなんだ?」

「はい、称号と言うのは。この世界で何か特別な存在、特別な事をした人に与えられる物です、それをといいます!」

「まあ、称号を持っている人なんて世界に十人程ですが……」

「じゅう十人ねぇー」


如何やら称号は、凄い物らしい――。


「ふぅー」


足が疲れてきたので緑の平原に腰を下すと口から吐息が漏れた。

知れず、疲れていたらしい。

何にも、考えずにボーとどこまでも続も平原を眺めていると、

オーロラも同じく俺の左隣りに腰下ろした。

そして、なんだか嬉しそうに少しの笑みを見せている。


「ど、どうした?」


若干引きながら、訪ねると。オーロラは、片手で手で口を覆い、教えません!などと返してくる。

――やはり、女と言う物が分からない!


「ああ! 話しの続きです! 魔法の覚え方は簡単です。ユウタさんの場合は特別例なので、使いたい魔法を唱えるだけでいいでしょう。ですが、それは中級魔法までです! いくらユウタさんでも、上級魔法になれば少しの詠唱が必要になります! その場合は……えー、例えば火属性上級魔法の”バースト”を使う時には、”炎の精霊よ、我に力を”と言う詠唱が必要になります!」


詠唱か……、まあ、短いから結構有り難いな。


「一回、試しにやってみてください!」

「わかった」


俺は、左手を頭上に掲げながら詠唱を開始した。


「”炎の精霊よ、我に力を” バースト!! 」


その瞬間、俺の掲げていた左に魔法陣が展開され――爆音と共に、俺とオーロラはぶっ飛んだ。

オーロラは、土だらけで俺を睨んでいる。


「ユウタさん……」

「いや、待て……いまのは、ちょっと……やめ、やめろおおおぉぉぉ!! 」





――夜の街。


「ユウタ! 飲むわよ!」

「あ、悪い。ちょっと、俺パス」

「えぇえー、どうして!? ついに、私を捨てちゃったの!?」

「いや、悪い。元々、俺は、お前を所持してねぇから。捨てるもクソもねぇ!」

「フ! 馬鹿ね! 今日は、アルレナもいるのよ! ユウタなんて要らないわ、さっさと出かけなさい」


コイツ……。


歯軋りを鳴らしながら、ムッと怒りを押し殺す。


「ユウタァーどこいくのォ?」

「ちょっとな……」

「まさか、女?」


いつも通りアルレナ目を細く尖らせ睨みながらは俺を疑ってくる。

それに対し、俺は慣れた口調で


「違う」

「ほんとォー?」

「本当本当!」

「ふーん、まァ。きおつけてねェー」


なんか、嫌味っぽく言われたが、ツッコミを入れると面倒な事になりそうなので辞めておこう。

おっと、オーロラを待たせているのを忘れていた。

一応、マリアとアルレナにはオーロラは、お店の方で色々していると、伝えておいたので行動を共にしているとは、思われないだろう。


やや急ぎ足で、宿を後にした。

外は、昼間と違い少々、肌寒い。

俺は、小さく身震いしながらオーロラとの待ち合わせ場所へと向かった。

空には、赤色の淡い月光を放つ月が俺を見下すかの様に、悠々と空に浮かんでいた。

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