章末 「魔王軍幹部 アルレナ」
「お、おい。早くマリアに掛けた『死の魔法』を解け!! 」
「はァ、あのねぇーこの私があの女に死の魔法ホントに掛けたと思ってんのォ?」
「え?だって、お前さっき……」
「ああ、ただキスして欲しかったから言っただけェ」
どうしてだ、コイツもマリアと何処か共通点を感じる……。
間違いない、コイツはこの後、必ず俺の異世界生活をぶち壊す。
ならば、先手必勝!! そうなる前に――。
「そ、そうか……じゃ、じゃあ。俺達はここで……早くマリアをヒーラーの所まで運びたいんで」
「ねェ、私も行く」
はい、来ましたああああァァ!!
絶対に言ってくると思いました。
そして、俺はどこはかとなく大人の対応で――。
「ははは、君まだ小さいじゃないか……俺はそんな小さい子を危なく危険な冒険になんて連れて行けないよ……」
――しかも、コイツ魔王軍幹部じゃなかった?
魔王軍幹部を連れて冒険をするなんてヤバイ以外何物でもない。
額に汗を浮かべている俺に対し、アルレナは不敵な笑みを浮かべながら……
「フフフ……私は、竜使いだよォー取り敢えず間違いなくユウタよりは強いと思うよォー?」
ごもっとも――。
おっしゃる通り、君は俺より明らかに……いや、絶対に強い。
けどな、そこじゃねんだわ。
俺が、心配しているのはバカが二人になるかもしれな事で、アルレナの心配は一切していない。
「う、うん。そうだが……」
言葉が詰まる。
「じゃあ、ついていくよォ?」
「いやいやいや、てっ!! お前、魔王軍幹部の仕事は―――ッ!? 」
「うーん。別にいいやァ……」
――おい、別にいいやァじゃねえ、いいやァじゃ!!
なんか、魔王さんが可哀想になってきた。
そして、俺は顔の表情を拒めて……
「――駄目だ、お前が良くても俺が苦労する事になる」
「えェーユウタ。 キスした女の子の事、見捨てるんだ……」
「―――」
ずるいぞこの女。
そして、再び顔を赤面にしている。
いや、可愛いんだが!? メチャクチャ可愛いんだが!?
「ねェ、ユウタ……」
アルレナは、赤面にしたまま。腰から下げている短剣を流れる様に抜き出して
「―――ッ!?」
「お願い……」
「おい、待て。その短剣を持ちながらマリアに近づくのはよせ」
「ちッ!!」
アレルナは舌打ちをしながら、悔し気に短剣を鞘にしまう。
それに対し、俺はマリアを背中に担ぎながらアレルナを信じて疑わない目で見つめ口を開く。
「おい……」
「んー?どうしたのォ?」
「はァー、ともかく、俺達についてくるのは駄目だ。じゃあな……」
「待っ――」
「――分かんないのか!? お前……他の人間にバレたら殺されるんだぞ!! 」
「大丈夫、バレないようにするからァ! 」
「…………」
――俺は、何も言わずにアルレナの前からゆっくりと立ち去る。
そんな、俺をアルレナは何処か悲し気な表情を浮かべ、ユウタの背中を目で追った。
その背中は、強い気持ちが籠っているかの様に逞しく――そして、溢れでる優しさを感じる。
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