ⅩⅩⅩⅢ
それにしても大人というのはどのような基準なのか?税金を払い、仕事に就き、親から自立して人によっては結婚して子を育てる。仕事を続けていれば出世して部下を持つ人も多くいるだろうし、更には起業して経営者になる人もいるだろう。
そうは言っても表面的には立派でも精神的に幼い人も中にはいる。結婚して子供がいてもルールやマナーをまともに守れない人もいるし、時として警察にお世話になるような犯罪を起こす人だっている。基本的には『自分の行動に責任を持てる』事こそ大人の基準なのだと思う、自分自身がそれを出来ているかといえば『YES!』と自信を持って言えないところが悲しすぎるところだが。
「……大人って何なんだろうね?」
今日は香津が自宅にいて落ち着かなかったので伊織と外で会うことにした。彼女も仕事をしているが、檜山との結婚を視野に入れているのか最近パートタイムに切り替えているそうだ。
「う〜ん、『自分の行動に責任を持てる人』なんじゃないかな?」
「だと思うんだけど……不倫する人って大人なの?」
「どうしたの急に?」
伊織は飲みかけのコーヒーを置いて私の顔を見る。
「うん、不倫するのって大人の人だとは思うんだけど、必ず誰かが傷付く事態の事してるのに『自分の行動に責任を持ててる』のかな?って思っただけ」
「人を傷付けてる時点で大人とは言えないんじゃないの?不倫って泥棒と一緒だし」
だよね……物を盗めば窃盗罪なのに人を盗んでも窃盗罪にならないのは何となく釈然としない。『人は物ではない』けれど、不倫されて泣いていた母を見てきただけに、人為的に家族を奪われたショック、悲しみ、憎しみはそう簡単に消えるものではない。極端かも知れないが不倫も刑事事件として扱ってほしいと思う時がある、人の価値はお金とは違うけどこれまであった光景がある日突然失われる喪失感は何とも表現し難いものがある。
「人を好きになる事自体はいいのよ、結婚してたってそういう事もあると思うから」
うん。伊織はまっすぐ私を見て相槌を打ってくる、彼女は本当に聞き上手だと思う。
「ただ先に離婚した方がいいと思う、コソコソ関係を築かれて相手を蔑ろにしまくった挙句ポイ捨てするのは違うと思う」
不倫される方にだって基本的人権はある。何日も何ヶ月も……何年も放置していい訳がない、いくら他の人を愛したからと言って、元の配偶者への愛情が無くなったからといって傷付けていいという事ではない、蔑んでいいものではない。そりゃあ愛情が消えればどうでもいい存在にはなるかも知れないが順番が逆ではないのか?理由も分からず何日も帰ってこない、たまに話し掛けても邪険にされるのはまだマシ、基本無視では精神が壊れても当たり前だと思う。
「お母様の背中思い出しちゃうんだね……」
伊織は寂しそうに言って私の手をそっと握ってくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます