ⅩⅩⅩⅠ

 「皆様涼まれてるんですか?」

 「あぁ薗田さん、ちょっと酔っちゃったもんだから……仰木さん、ここ歩きタバコ違法ですよ」

 「そんなのバレなきゃいいでしょ?」

 ここでも怯まない仰木大和、お前一体どんなメンタルしてるんだ?まぁ平然と不倫するような男にマナー力を期待するのは無理であろう。

 「うちら全員禁煙者なんだよね」

 「迷惑なんでやめていただけません?灰は飛んでくるし副流煙はうっざいしその火だって危ないですよね?」

 そうそう週刊誌担当の方々結構口調がキツイんだった。私も慣れるまで苦労したものだ。

 「そこまで嫌わなくてもよくない?」

 「嫌う以前に一緒にされたくないんですよね、違法者と」

 凄い……私は彼らを羨望の眼差しで見つめてしまう。これくらい言えればなぁ……と思うが性に合わないのもまた事実なので羨ましくは思うが真似はできない。

 「あ~そうそう、不倫だって立派な法律違反ですもんね」

 それ面と向かって言っちゃうんだ、やっぱり私には無理。

 「でも人を好きになるって素敵な事だと思わない?」

 ふ~ん、そういう言い方するんだぁ。超絶ご都合脳にある意味感心する、勿論何一つ見習いたくはないが。

 「独身同士ならそうだろうけど、誰かを踏みつけてる上での恋愛は素敵と言うより気持ち悪いね」

 「そうよね、そういう人に大事な事は頼めないよね」

 「配偶者以外を好きになったのなら離婚が先だよね、知った時のショックはあるけど、影でコソコソ他所の人間と懇ろされる方が嫌だよね」

 週刊誌担当の方々にとって不倫ネタは日常茶飯事、倫理と道徳心があれば嫌悪感も出てくるはずだ。

 「何かそういうのギスギスしてて嫌だなぁ、ねぇ麻帆ちゃん」

 私は不倫反対派だ、いくら香津の知り合いだからって余計な絡み方しないでほしい。

 「私は不倫は泥棒と同じだと思います。一つのご家庭をわざわざぶち壊して大切なものを強引に奪い取り、無条件で周囲の心を傷めつけます。非常に悪質な行為ですし、誰かを不幸にする事はあっても幸せにする事は無いと思います」

 「でも誰かを好きになるタイミングって誰にも予測できないんだよ、結婚してから運命の相手に出会う事だってあると思うんだ」

 どこまで自分の下半身のだらしなさを正当化したいんだろうか、この男。

 「そんなのは一握りもいないと思います。結局は自分たちの非道行為を正当化しているようにしか聞こえません、見苦しいです」

 は~ちょっとだけスッキリした~、やめるやめないは本人の勝手なので『不倫はやめるべき』とまで押し付けがましいことまでは言わないでおく。

 「ぇ~……」

 いやこっちがえ~?だ、味方になるとでも思ってたのか?

 「そろそろ戻りましょうか、薗田さんたちはさっき出てきたばかりだけど……」

 「もう酔いも冷めましたし私たちも戻ります」

 私の言葉に相川さんも頷いた。

 「んじゃ戻りましょうか。仰木さんは付いてこないでくださいね、歩きタバコの同罪とか嫌ですから」

 「あぁ、不倫に関してもね。それにしても薗田さんも災難だよね、あんなのに目ぇ付けられちゃってさ」

 本当そうだ、こっちは極力この男とは関わりたくないってのに。新垣仁志も大概だったが、香津の男を見るセンスの無さをこれ程までに恨めしく思った事は無かった。

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