第1話 出会い
目覚まし時計の音とカーテンの隙間から差し込む光で目を覚ます。
「後5ふ~ん」と目覚ましを止めて、 階段下から呼ぶ声がしたが、無視して眠りだす。
誰かが階段をバタバタ上がってきて、部屋のドアをバッタンと開けてオタマを顔にむけ投げてきた。
「いって~え~!?何すんだよ綾(あや)姉。」
「何するじゃないわよ、何回呼んでも起きてこないからでしょ。」
「まだ遅刻するような時間じゃないけど?」
「たのみたい事があるのだから早く着替えて降りてきて。」
わかったよとまだ眠気のとれていない身体をおこす、起きたのを確認した綾姉は部屋から出ていった。
着替えをしながら夢の事を思いだす。
「またあの夢を見たな~~あ~~、あの日からよく見るんだよな~~。」
まだ幼い頃にとある事故で、俺は両親を亡くしてしまいその時のショックのせいか、それ一部の記憶を無くしてしまった、それから俺はあの夢を見るようになった。
医者によると、事故のショックによる一時的な物ではないかと判断されている。
だけど高校生になった今でも記憶はもどらず。この夢をいまだに見ている。
着替えてリビングに降りると綾姉が朝食のしたくをしている。
「おはよう英二(えいじ)、できてるやつから食べちゃって。」
席について焼きたてのトーストを食べていると目玉焼きを綾姉が持ってきて前の席に座る。
「それでたのみたい事って何?。」
「実はさっきオバさんからこれを届けてほしいってたのまれたの。だからこれをチカちゃんに届けてほしいの。」
そう言って大きな包みを渡してくる。
「え~~綾姉が持っていけばいいだろ。どうせ学校であうんだから。」
「私は学校に行ったら会議があるからいけないの。それにチカちゃん朝ごはんも食べずに朝練にでてるから早く渡してあげたいじゃない。」
「わかったよ、そのかわり今日の食事当番綾姉に任せるからね。」
「それでのったよろしくね。」
この家には綾姉と両親を亡くし親戚という事でひきとってくれた俺とで暮らしている。正しくは綾姉のお母さんをいれて三人で暮らしている。
如月 葵(きさらぎ あおい)こと綾姉のお母さんは仕事で、ハリウッドなどの各地を飛びまわるトップメイクアーティストだからめったに家には帰ってこない。
お父さんは綾姉が小さい頃に亡くなったらしい。
だから少し年上の綾姉が教師の仕事をしながら、母親のかわりに俺の面倒をみてくれている。
「ごちそうさま、それじゃ先に学校にいくね。」
「行ってらしゃい、ちゃんとチカちゃんに届けてね。」
行ってきまーすと家をでて、いつもの下り坂を駆け足で走っていると、突然横道から人影があらわれた、坂を駆け足で走っていたから止まれずその人影とぶつかった。
「きゃー」という声が聞こえた。ぶつかったのは多分女の子だ。
目を開けるとなぜか辺りは暗くなぜか考えていると、突然明るくなり起き上がると、目の前には金髪の女の子がスカートをおさえて立っていた。
「見た?」
「何を?」と俺が訪ねると女の子が顔を赤くして。
「この変態。」
と言い残して走りさって行った。
何があったかわからずしばらくボーっとしているとあの子が着ていた制服が、うちの学園の二年生のものだったことにきずく。
「うちの学園にあんな子いたかな?まあ女子の事はアイツに聞くのが一番だ。」
そう思い学校に向かって歩きだす。
校門前につくと後ろから
え~い~じ~と名前を呼ばれ振り向くと、声の主に抱きつかれた。
「柧乃美(このみ)いつも急に抱きつくなって言ってるだろ。」
「え~だって英二が置いていくのが悪いんじゃん。待っててくれれば良いのに。」
「柧乃美を待ってたら遅刻しちゃうだろ。」
「遅刻なんてしないよ。週に三回くらいしか。」
柧乃美はトボケた顔でそう言う。
「週の半分が遅刻じゃないか 。」
「ところで、その大きな包みはナニ?」
話しをそらすように包みの事を聞く。
「チカ姉のお弁当と着替えだよ。オバさんが届けてくれってさ。」
柧乃美はチカ姉の名前を聞くと、目の色を変えて。
「アタシもついて行く。」
「どうせ来るなって言ってもついてくるんだろ。柧乃美はチカ姉のファンだから。」
ばれたかと笑みをうかべて、舌をチロンとだす。
「さすがは私の幼馴染、だてに長い付き合いじゃないね。」
「それにしてもそんなにチカ姉に憧れるもんかね。」
「だってチカ姉は成績も良くて、美人で剣道じゃ男子にも負けない、誰もが憧れる人なんだよ。」
「ちょっとオーバーじゃないか?」
「オーバーでも良いのそれより早くいこう。」
柧乃美が校門を走り抜けようとすると。
「まちなさい、高倉(たかくら) 柧乃美さん。」
柧乃美を止める声がした、それに続き俺も呼びとめられた。
「おはようございます西園寺(さいおんじ)先輩。」
「おはよう橘君、それより二人とも服装がみだれてるわよ。」
俺と柧乃美は、お互いに確認するがどこがかわからなかった。
「ハーア、橘(たちばな)君はネクタイがまがってる、高倉さんはシャツのボタンをかけまちがってるわよ。服装のみだれは心のみだれ、きちんとしてないと朝からシャキっとしないわよ。」
だいたいあなたたちはとまた、お説教がはじまろうとしていると、先輩に突然飛びついてきた人がいた。
「おはよう、オトメちゃん今日も朝からイライラしてるね。」
「ちょ…ちょっと香奈(かな)いきなり抱きつかないでって、いつも言ってるでしょ。」
「だってオトメちゃんが可愛いんだもん。」
「あ~も~いつもそればっかり言って。怒る気もなくなったわ、早く教室に行きなさい。」
「ハ~ァ~イ、あなたたちも行きましょう。」
俺達を呼ぶ先輩、西園寺先輩を見ると先輩は頭を抱えながら、行きなさいといわんばかりに手を振る。
俺達は先輩に頭をさげて、待っている先輩のもとに行く。
「ありがとうございます、相原(あいはら)先輩。」
「良いの、良いの、まったくオトメちゃんも少しくらいみのがしてくれれば良いのにね。」
ふてくされたように、頬を少し膨らませて言う。
「風紀委員長だから気合いが入ってるんですよ。」
先輩は納得いかないといわんばかりに、ム~とした顔をしている。
何かを思いだしたのか先輩は突然。
「いけないこんなことしてる場合じゃなかった。それじゃあまたあったら話しましょう。」
先輩を見送り柧乃美と「気まぐれな先輩だったね。」「そうだね。」とはなす。
先輩と別れてチカ姉に会いに、武道館にいくと中には、凄い数の人が集まっていた。
「相変わらず凄い人気だな~。これってやっぱりチカ姉のファン?」
「ファンもいるけど野次馬がほとんどだと思う。毎回恒例のチカ姉と付き合うための試合の結果を見にきてるんだよ。」
柧乃美が説明してくれていると、試合が終わったのかギャラリーが散々になりはじめた。
残ったギャラリーの中心で防具を外しているのがチカ姉だ。
入口で見ていた俺達に気づいてこっちにチカ姉がやってきた。
「二人も見に来てたんだ。」
「さっき来たとこだよ。はいこれオバさんから。」
「わざわざこっちまで届けてくれたんだ、ありがとう。二人とも。」
「それにしてもチカ姉の格好いいとこ見たかったな。」
残念そうに柧乃美は肩を落とす。
「今日の昼休みまた試合があるから見に来ると良いよ柧乃美ちゃん。」
絶対に見に来ると柧乃美は目をかがやかす。
「それにしてもまだこの試合やってるんだ。」
「まあなりゆきでね。それより英二こっちに来て。」
呼ばれてチカ姉に近づくと、まがっていたネクタイを直しはじめる。
「身だしなみはちゃんとしないと男がだいなしだよ。」
「自分で直すから良いよ。」
ダ~メと無理やり直す。直してくれるのはありがたいが、柧乃美やファンの人達の視線が凄くいたい。
チカ姉こと神木 千佳(かみき ちか)は神木流道場の一人娘で強く、正しく、美しくのもと自分を鍛えている。
そのせいか男子から告白される事が多く、それに悩み苦しんでいたところ、チカ姉の友達がチカ姉に剣道の試合で勝てたら、つきあう事ができると噂を勝手に流し。
それからは毎日のように、試合を申し込みがやまない。
「チカ姉試合がめんどくさいなら、誰かと付き合っちゃえば良いのに。」
「それができればこんな事してないよ。これでよし、遅刻しないよう早く教室に行きなよ。」
「わかったよ、チカ姉直してくれてありがとう。それじゃまたね。」
チカ姉と別れ武道館を出ていって、柧乃美とは下駄箱で別れて、教室につくと。
「おはよう我が友英二くん。朝から幼馴染と登校とは、羨ましいかぎりだね~。」
「朝からテンション高いなリオウ。あと誰が友だ、誰が。」
「ハハハ、そんな事言うなよ俺達の仲だろ?」
この男は龍ヶ崎 桜華(りゅうがさき おうか)皆からはリオウと呼ばれている。いいや呼ばせているが正しい。
なぜかは知らないがやたらと、女子の情報を持っている謎の悪友だ。
だからこいつに聴けば今朝の女の子事が解るというわけだ。
「それより聴きたい事があるんだけど?」
今朝の女の子の特徴を教えると、どこからかノートを取り出し、う~んと調べはじめる。
「そんな子うちの学園にも町にもいないぞ?本当にうちの子か?自慢じゃないが俺の知らない女性はいないと思うがな?」
間違いなくうちの学園の制服だと思ったんだがな?視間違いだったかな?
「それより窓の外を観ろよ、今日は凄い物が観れるぜ。」
外を視てみると黒い車が校門前にとまり、レッドカーペットが引かれる。
「凄い物ってあれか?」
「そう、うちの学園の三代お嬢様のご登校だ。」
最初に車から降りてきたのは、金髪で背まである、ロングヘアーに巻き髪の高笑いをしながら歩く女子。
「まずはうちの学園の三年生、王道院 瑠璃千代(おうどういん るりちよ)、王道院財団の社長の令嬢にして、長がつく大富豪だ。そして学園長の孫という立場からか、権力を乱用している。そのせいか行事の大半は彼女が決めている。」
ふ~んと聞いていると。車から 誰かが降りて来た。次に降りて来たのは黒髪のロングヘアーでおちつきのある雰囲気をした女の子だ。
「次に来たのは、神宮寺 月夜(しんぐうじ つきよ)二年生で茶道に華道、和の事ならなんでもござれのお嬢様だ。そして神宮寺神社の舞妓さんで、町内会長の娘さんだ。あの人の事を大和撫子と言うのかもな。」
次に降りて来たのは、茶髪にショートヘアーの明るい感じの女の子。
「最後に降りて来たのはシャーロット・ミッチェル三年生でみんなからシャーロと愛称で呼ばれている。五年くらい前に親のつごうで日本に引っ越してきたお嬢様だな。親はなんでも、王道院財団との共同経営会社らしく、海外にいくつもの会社をもつ大富豪らしい。」
どこで調べたかわからない説明をようやく話し終えたようだ。
「それで、なぜあの三人が一緒に登校してきたんだ?」
「もうすぐ祭りだからさ。だから王道院家に集まって予算や企画の相談をしてるのさ。まあほとんどは島の持ち主である、王道院家が決定権を持ってるんだがな。」
「なるほどな。ところでおまえそのケガどうした?」
リオウの頬のキズを指して聞く。
「今朝神木先輩と試合して、できたキズだ。」
「おまえもやったのか!?相変わらずこりずに挑戦してるのか!?」
「神木先輩と付き合うまでは、諦めるわけないだろ、今年こそは絶対に神木先輩に勝って付き合ってみせる。」
「絶対にムリだな。去年からほぼ毎回挑んで敗北してるだろ。今何敗してんだよ。」
何敗してるか数えようとしているとチャイムが鳴り、担任の綾姉がやってきてそれぞれの席に着く。
「おはよう皆、今日はまず始めに転校生を紹介したいと思う。入ってきて。」
転校生が教室に入ってきて皆がザワつく。
俺は転校生に興味がなく、窓の外の景色をみていると、聞き覚えのある声がする。
「アメリカから転校してきました、瀧川(たきがわ) アリスです。アメリカには十年間住んでいましたが、日本には小さい頃に住んでいたので 、話す時は日本語でかまいません。これからよろしくお願いします。」
声を聞いて、俺は顔を確認して驚いた。
なんと今朝ぶっかった女の子だった。なんだか気まずいので俺は隠れるように教科書で顔を隠した。
「皆転校生と仲良くするようにな、それじゃ瀧川の席は英二の隣な。」
綾姉のバカー何で俺の隣なんだよ。
「英二立って、瀧川あの子の隣の席な。」
仕方なく立つと、瀧川と目が合う。ぶっかった相手だと気づいたらしく。あっと反応はしたが、気にしてないのかニコニコ笑っている。
そのまま隣まで歩いてくると席に着かず、俺を見て。
「今朝はどおも、この変態!!」
教室に響くくらい大きな声でそう言た。
皆が俺達の方を向いてザワつく。
そんななか俺は思った、今日は最悪な日だと。
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