第11話 原因判明
「おい、このコードを書いたのはお前か?」
メガネをかけた小人さんが、威張りながら俺の前に出てきた。
「あぁ、一応、俺がプロジェクトリーダーだが」
「こんなプログラムが入っているエアコンに俺達吸い込まれたら、死んじまうだろう」
「はぁ、殺人を犯すようなプログラムなんか書いた覚えはないんだが」
仕事で書いたのはセンサーのプログラムで機械を動かす部分じゃない。そうだとしても、エアコンが人(小人)を殺す動きをするなんてありえない。
「ふぅ~、こいつ、何にもわかってないなぁ~。親方、ちょっと、こいつに言って聞かせてやってください」
小人の群れの中から、お爺さんっぽいのが現れた。
「人間さんよ。俺たちゃこのエアコンに吸い込まれた後は、センサーによって管理されているんだ。あんた達には理解できない動きが一杯あるんだろうが、それらには意味があるんじゃ。やっつけでプログラムを組まれたら困る。下手な扱いされたらわしたちの命に関わるんじゃよ」
「はぁ…」
「はぁ、じゃねぇよ。お前。わかってるのか、お前の書いたコードで、こっちは死んでしまうって言ってるんだよ」
そんなこと言われても、想像もつかない。
「全然わかってないようだな」メガネ小人が、やれやれと言った仕草で呆れ果てる。
お爺さん小人が、前に出てきて俺に紙を突き出した。
(この紙も瘴気なんだよな…不思議だ…)
「あのな、例えばお前が書いたこの部分じゃ」目を凝らして、紙を見る。
条件判定のif文が書かれている。
「なんで、こんな意味不明な条件判定を組み込んでいるんだ」
お爺さん小人が指摘している部分ははっきり覚えている。俺自身が書いたコードだ。エアコンが吸い込んだ気体(瘴気)をセンサーに感知させたあとの、意味不明な条件判定が随所に出てくる仕様だったので、一回の処理で済むように俺なりに工夫したところだ。
「そこは、仕様がおかしかったからスマートな処理に書き換えたんだ。内部のテストでは問題無かったぞ」
年配者(?)とはいえ、気体の小人ふぜいに仕事のケチをつけられたくはない。
「お前、ダメだな。ここで、こんな処理を入れられたら、わしらはこうなってしまう」
お爺さん小人が変身してミイラのようになった。
「え、なんで?なんでミイラになっちゃうの」
すぐに元の状態に戻った。
「すごいな、瘴気の小人さん。こんな宴会芸じみた事までできるなんて」
「わかったか」お爺さん小人が俺に目を向ける。
「わかんないよ…」
小人がミイラというか飢餓状態になるなんて。いや、まて。
「ちょっと、さっきの紙をもう一度見せてくれ」
確か不要と思われるゴミデータがくっついているので、ここでデータを削って…
「…うーん、ゴミデータ削ってはいけなかったのか」
「わかったようじゃな」
お爺さん小人がいう。
「あれはゴミデータじゃねぇ。俺たちの食料や養分だ」
「やれやれ、さすがに疲れたな…」
その後一時間くらい小人どもにクレームを言われ続けた俺は、さすがに心が折れそうになり、マリアの家のリビングで彼(彼女?)が入れてくれた紅茶を飲んで、休憩をとっている。
「何かわかりましたか?」
「あぁ、だいたい察しはついたよ。プログラムを一部、書き直すよ」
気を利かせて変更したコードが原因で瘴気が機嫌を損ね、煙を大量に出すなどの暴走や悪さしていたのだ。変更箇所は全て把握できているから、元の無意味(小人達には重大事項だが)な処理を復活させるだけだ。
「でも、瘴気って、魔界の住人が出す気なんだろう。それが小人だったとは」
「研二さん、瘴気は小人じゃないですよ。この眼鏡がそう見せてるだけです」
「えっ、そうなの。でもさっきは」
「この眼鏡や補聴器は気体や電気とコミュニケーション取るためのアイテムで単にそう見えてるだけなんです」
「なるほどね、ある意味メガネと補聴器に騙されてるわけね」
このメガネ、今度仕事に使えないか試させてもらおう。
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