第10話 瘴気は小人さん
"
「そんなことあるの?」マリアに訪ねる俺も、いくら何でもそれは無いだろう、だがひょっとして、と半信半疑だ。
「えぇ、私達、魔界の住人が出す瘴気は、こちらの世界の機械やソフトウェアに変化を与えてしまう場合があります」
「変化を与えるって…機械がさびちゃうとか」
「まぁ、そんなところです」
「まぁ、世の中、気功で病気を治癒するなんてことがあるんだから、瘴気が機械に悪影響を及ぼすなんてのは、理解はできる」
「うんうん、わかってくれてうれしいです」マリアがうれしそうにうなずく。
「だが、プログラムというか、ソフトウェアに影響与えるってどういうことだ。機械ではないけど」
「うーん、私も聞いたことがあるだけだったんで…」
「前のオーナーさんの時にもあったの、こんなトラブルは」
「いいえ。初めてですね」
やれやれ、おれは、運が悪いのか…。いや、ここは前向きに考えよう。
世の中には不思議な事があるのだ。うん。
交換対応したエアコンはマリア(=佐々木 真莉愛)の家に運び込まれてるという。
ここで考えていてもしょうが無いので、会社ひけたらマリアの家で物を見てみよう。
ベルクシステムさんとの話し合いはその後だ。
で、アパートのすぐ近くにある彼女(?)の家にきてみた。
「どうぞ、上がってください」
まだ男のマリアのままだ。気兼ねせず家に上がらせてもらう。
一階の一番奥の部屋に案内された。
「ここが工房につながっています」
工房? アトリエのような感じかな。
真っ暗な部屋に入ると急に明るくなった周りを見る。
「えーと、何にもないね」
部屋の中には奥に机と椅子が一式置いてあるだけ。
真ん中にエアコンが置いてある。
「今日、本国から届いた物資に今回の原因を探れそうなアイテムがあるんですよ」
マリアが机の中から黒縁メガネを取り出した。
「その眼鏡は」
「これで見ると、瘴気や気の流れが見えるんですよ。ちょっと工夫すれば電気の流れも見えます。機械の故障とかで私達魔族はよく使うんです」
「へー、そりゃー便利だなぁ」
マリアは黒縁眼鏡をかけた。あぁ、せめて、女の姿に戻ってくれれば、赤毛の眼鏡女子を拝めたのに。
「研二さん。やっぱり瘴気が悪さしてますね」
マリアが渡してくれた眼鏡をかけて、エアコンを見てた。
瘴気って、こういう風に見えるのね。
なんか、紫のローブを着た小人さん達が大勢集まり、エアコンの周りで作業をしている。
眼鏡を外すと、小人はいない。
「瘴気って小人なのか」
「わかりやすいでしょ」
「いや、確かにわかりやすいが、煙みたいのかと思ってたんで」
再び眼鏡をかけて、目をこらしてエアコンをみる。
倍率が自然に変わりズームアップされる。これは便利だ。
で、小人さん達をみると、各自がノートパソコンを持って何か打ち込んでる。
「なんか、小人さん、パソコンで作業してるよ」
「多分、回路のプログラムを書き換えてるんでしょうね」
「すごいな小人さん、回路に組み込まれたプログラムを書き換えるんだ」
おれはげんなりした(正確には一瞬だけものすごく感心した)。
いくら仕様通りにプログラムを組み上げても、瘴気の小人さん達が組み込まれた物を書き換えたら、意味ないじゃないか。
よく見ると小人さん達のうちの一匹(一人?)が俺に向かって何か言ってるように見える。
「なんか、俺にしゃべりかけてる小人さんがいるんだけど」
「これを付けてください。補聴器です」
俺は耳に補聴器を付けて、小人さんをみた。
「やい、お前、こんなしょぼいプログラムを入れ込みやがって。このヘタレ」
「しょぼいプログラムって怒られました」俺はマリアと顔を合わせてため息をついた。
やれやれ、人生で初めてです。瘴気(小人)にクレームを付けられたのは…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます