セントエルモ


噛み殺した嗚咽が零れる

ナイフみたいに握りしめたペン

すました白をひっかいて、刻まれた

「HELP ME.」

滴って、喉を焼き

コンクリートの床に落ちる


赤を赤といえば銃で撃たれた

傷以外に得たものはない


では、失ったものはあったか?


置き去りにした昨日も

踏みつぶした幼い悲鳴も

その背に負って、望んだ道に迷うなら


火よ

旅人の火よ


だれかの痛みが生んだ緋よ

だれかの叫びを呼んだ悲よ


あの日、冷たい床に跳ね返って、空を馳け、星になった


すべての旅人の涙のほのおよ


星の無い夜に光を

あらしの海に凪を


わたしが

わたしたちが


いつか


あなたのもとへ帰るまで





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