越夜

白磁の地球を踏みしめて

遠い異国にまだ文も見ず

青い三日月を千切って散らして

声をひそめてなく海燕


「まだ故郷には帰れない」


銀の水瓶に溜まった涙を

そこに映した星座ごと

飲み干して

夜を追い立てる街の明かりを

睨む


「私、生かされるために生まれたんじゃないわ。

生きるために、生まれたの」


羽音は彼方

月は、もはや燕を照らさない



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る