余ったから

「これ、バイト先で余ったから、あげる」

 その言葉と共にあいつが小さな包みを押しつけてきたのが、一月前。リボンで飾られたその包みは今もそのまま、俺の勉強机の隅に置かれている。

 もらったのなら、お返しをするべきだろう。バイト先のスーパーで、綺麗な缶に入ったクッキーを選ぶ。あいつのバイト先の、小さな菓子店の裏で待っていると、閉店時間を30分過ぎてようやく、赤い頬のあいつが現れた。

「これ、バイト先で余ったやつ」

 一言だけで、クッキーの缶をあいつの腕に押しつける。あいつの顔も確かめず、俺はその場を走り去った。

 迷惑、だっただろうか? 自分の部屋で息を吐く。

 一月放置した包みに、俺はそっと手を掛けた。

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