涙を求める

 世の中には、宝石の涙を流す妖が居るらしい。

「で、その噂を確かめるために、そなたはここまでのこのことやって来た、と」

 大陸の辺境に位置する、深い森の中。にやりと口の端を上げ、ゆうを睨んだ女怪の、縦も横も尤の三倍はあろうかという影に、尤は逃げ出したくなるのを辛うじて堪えた。

 その時。

「うわっ!」

 身体を吹き飛ばす大風を、地面に這いつくばることでかわす。揺れに揺れる木々の間から見えたのは、地を覆い尽くす巨大な影。

「戻ってきたな」

 あの者が、宝石の涙を流す鳥妖。女怪の言葉にあんぐりと口を開ける。鳥の泣かせ方など、知らない。落ちた涙で尤が潰れてしまう可能性も、ある。どうすれば。尤は正直途方に暮れた。




Twitter300字SS お題『涙』

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