時計を知らない少年と、時計を無くした時間旅行者
揺れる草影に隠れていた物体を、そっと拾い上げる。
小さな手の中に収まる、滑らかで丸い物体。熱が無いから生物ではない。いや、透明な面の向こうに見える三種類の細いものは規則正しく動いている。耳を近付けると、胸の鼓動に似た音がする。きっと凍えているのだろう。アキは一人頷くと、その物体を胸元に入れようとした。
その時。
「あ、あった!」
高い声と共に、手の中の生物が消える。
アキの手の中にあったはずの生物を手にした、背の高い影は、声だけを残して虚空へと消えた。
あの生物は、あの人が大切にしていたもの。それだけを、何とか理解する。大切な人の手の中に戻った。それで良いではないか。過ぎった寂しさに、アキは小さく頷いた。
てきれぼ300字企画ポストカードラリー お題『時計』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。