約束は昔
いきなり目の前に現れた指輪に、思考が混乱する。
「どうした? 受け取ってくれないのか?」
その指輪を差し出す武骨な指を見つめたまま、リィンは声を出すことを忘れた。
確かに、まだ幼い頃、リィンはこの、リィンの家を守っていた武人の男と婚約した。でも、それは、幼いリィンの我が儘を宥めるために大人達が用意した『嘘』。そう、リィンは思っていた。それに。今のリィンは、政変で没落した貴族の娘。昔の、我が儘が言えた頃とは違う。家計を助けるために、両親が決めた金持ちと結婚しなければならない。
「俺は、本気だったんだけどな」
遠ざかる指輪に、唇を噛む。
昔と同じ広い背中を見送るリィンの視界は、ずっとぼやけたままだった。
Twitter300字SS お題『約束』
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