カレーと匙
「このカレーの真の味は、全部食べなければ分からない」
コンロの上のカレー鍋を前にして、兄が大仰に匙を振る。
「しかし全部食べてしまえば、弟に食べさせる分が無くなってしまう。だから一匙すくって味見をしたそのデータから、カレーがちゃんとできているかどうか判断する必要が……」
「御託はいいから早く食べよう」
床に寝転んで兄を見上げた俺の言葉で、兄の額に青筋が立った。
「おっまえなぁ! 俺の統計学のみならず、数学全部赤点だったんだろうがっ!」
明日の追試に向けて補講をしてやっているというのに。兄の言葉に、息を吐く。兄が教授をしている大学に入ったことは、間違いだったか。カレーを忘れて説教し続ける兄に、俺は肩を竦めた。
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