カクヨム小説 指名手配

ちびまるフォイ

見つけたらすぐに報告しろ!!

「なんだこれ? 小説ウォンテッド企画?」


しばらくカクヨムにアクセスしなかった俺が

失恋を機にサイトへ訪れると待っていたのは

絶望的なまでに少ない応援コメントと新企画のお知らせだった。


運営からは特定のお題が提示され、

それに合致する小説を探し当てて入力フォームでコメントする。


一番最初に見つけられた人が報酬を得るという内容のもの。


「こんなの、検索すれば一発だろ」


【 異世界 】

【 ロボットに転生 】

【 ヒロインは家電 】


お題を確認すると、サイトの検索窓に入力する。


「異世界に……ロボット、家電っと」


検索結果は何百個にものぼった。

条件に合致しなくても本文に含まれていれば検索してしまう。


指名手配されている作品はたったひとつ。

この膨大な数から探し当てるのは難しい。


「……まあ、適当に出せば一番最初には報告できるだろ」


検索結果の一番上に出てきた小説を報告しようと

企画ページに向かうとすでにどっさりとコメントが来ていた。


「え、もうこんなに来てるの!?」


すでに一番最初に小説を報告した人が

バウンティ達成として報酬も受け取っている。


「くっそーー……何が"バウンティハンターのぶすけ"だ。

 絶対に負けるものか!」


テキトーに報告する気まんまんだったはずが、

負けてしまったことで闘志がムカムカとわいてきた。

たぶん、達成者のユーザーアカウント名も影響している。


その日から、カクヨムには1日も途切れることなくアクセスした。


「検索してから報告するんじゃ遅すぎる。

 もっと最初の段階から把握しておかないと」


サイトにアクセスして、新着から人気作までざっと目を通す。

特徴のある小説はフォローしてすぐに引き出せるようにストック。

準備が整ったころ、次の手配書が掲示された。


【 本格ミステリー 】

【 全員が探偵 】

【 タイムトラベル 】


「よし来た!! これは1番乗りだ!!」


これだけ特徴のある小説は見逃すはずがない。

マイページのフォロー作品から引っ張り出して、いの一番に報告する。

これで"のぶすけ"に勝つことができる。



『 正解です。では別作者で同じ題材をもう1作品探してください 』



「えええ!?」


まさかの神経衰弱方式。

同じ題材のものがもう1つあるなんて思わなかった。

読んだ記憶があったのでフォローからすぐに特定できたけど。


いくら検索しても結果に出てくるのはスピンオフ作品ばかり。

最初に俺が報告してしまったばかりに、ほかの人よりも2作目を探すスタートが遅れている。


「たしかに読んだ記憶はあるのに……!」


何かヒントはにないかと最初の作品を開いた。

内容を読んでいると、違和感を感じた。


「……ん? これ読んだことあるけど、もっと前にも同じようなの読んだぞ?」


同じ題材で別作者の作品を、もっと以前に読んだ記憶がある。

でもいったいどうすれば特定できるのか。


「昔に読んだってことは……もしかしたら評価もしてるかも!」


自分が応援もしくはレビューした作品をあさった。

フォローした作品は数あれど、評価した作品は絞られる。


ついにその小説を見つけた。


「うおお! 間に合えぇぇ!!」


慌てて企画ページで報告すると、花丸がついた。


『おめでとうございます! あなたが1番、バウンティ達成です!』


「よっしゃあ! 見たかこのやろーー!!」


思わず叫んでしまった。

報酬については別途連絡が来るそうなので待つことに。


「こちらはカクヨム運営です。この度の報酬を渡します」


「報酬って何になるんですか?」


「あなたの小説を次の指名手配小説にします」


「……それって本当に報酬なんですか?」


「指名手配された小説は特定のために探されます。

 それに、結果は公表されますから、参加しなかった人にも

 あなたの小説がどんなものなのかアクセスされますよ」


言われてみれば、探した後も自分がどうして間に合わなかったのかと

特定された小説をしっかり読み込んでいていた。


「もともと、この企画はカクヨムで作品の発掘と評価を

 より活発にするための企画ですから」


「それじゃ、指名手配よろしくお願いします!!」


話を聞くほど、報酬への魅力がどんどん増していく。

PV数が増え、応援コメントが増え、レビューされる未来が見える。

ランキング常連になれば書籍化の話も来るだろうか。


「では、あなたの指名手配する作品を教えてください。

 これから告知します」


「俺の自信作『異世界で奴隷になったけどハーレムになりました』を!」


「かしこまりました」


指名手配が行われ、ワクワクしながら指名手配企画ページを覗いた。

今回は参加できないものの、ほかの参加者が俺の作品を出すのが楽しみでならない。

すでにページには指名手配されていた。



・次のお題


【 ありがちクソ異世界 】

【 テンプレクソハーレム 】

【 童貞臭いイチャラブ展開 】




「ふざけんなこの野郎! こんなお題で特定できるかぁ!!」


お題を見てメロスも激怒した。

その数秒後、別のユーザーが報告した。




>『異世界で奴隷になったけどハーレムになりました』ですね!

>これ以外に考えられません!!



全米が泣いた。

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