魔導師は考える
「「あれ、参加資格1つもクリアしてなくない?」」
これはマズイな特にパーティメンバー3人以上がクリアできそうにない
「まずユータさん、このイベントってなんなの?」
「これはイベントの名前の通りあのでかい塔をどれだけ登れるかを競うものだ」
「塔ってあの真っ黒の?! かなりの高さがあると思うんだけど……」
一階層の高さは10メートルくらいあった気がするから100階層で……全部で1000メートルか、高山病にでもかかりそうな高さだな
「ああ、高さは約1000メートルだな、かなりキツイはずだ、でもミーア、頑張って登りきった苦労の後には優勝商品が待ってるぞ」
「そりゃそうでしょ、1000万z参加費払って、1000メートルの塔を登るんだから
ユータさん、商品って何なの?」
「商品はとんでもなくでかい宝石だ。10億以上で売れるくらいの価値がある」
宝石はこぶし大の大きさのダイヤモンドだ
ゲーム内では本当に10億で売れる
なぜかカッティングされて磨かれているが
そういう仕様なのだろう
磨かれてもない透明なゴツゴツした石を渡されてダイヤモンドです。と言われてもその珍しさがわからないしな
「10億って、2人で分けても5億zでしょ、5億って言ったら一生遊んで暮らせるくらいのお金じゃん、でもユータさんそこまでお金好きだったっけ?」
「嫌いではないが宝石は売るためには使わないよ」
ミーアを驚かせるため使用用途はまだ秘密にしておくが絶対に喜んでくれるはずだ
「10億円を取らないでなにを取るの?」
ミーアが食い気味に聞いてくる。ミーアはお金が大好きなのか
「まだ秘密だけど、ヒントをあげようか
手に入れた宝石はこの街で使うぞ」
「この街……か、それだけじゃ答えられないよ、うーん、あの黒い塔とか?」
ミーアが正解をつぶやいているが正解!
とは言ってあげない、なにに使うか楽しみにしといたほうがモチベーションが上がる
時計を見ると7時を指しているそろそろ宿を決めないと部屋が埋まってしまう
ニーナさんの宿みたいに少し高くても良い宿を探していると赤いレンガでできたオシャレな宿を見つけた
「いつでも明るくあなたをお迎えします
ガレン」
名前が安直だな、おそらくレンガから取っていると思うが見た目は安直とは程遠い。
丁寧に積まれているレンガは上から下につれて赤いレンガが白いレンガに変わっていくグラデーションだ
一色なら安く済むと思うがこのデザインだと沢山の色の種類が必要なので、お金が普通の何倍もかかると思う
「ミーア、ここの宿なんかどうだ?」
「白と赤のグラデーションがオシャレだね建物にこういうデザインは見たことがないよ。珍しい、ここに泊まろ」
ミーアは服もオシャレだがこういう建物のデザインにも趣きがあるのか、守備範囲がひろいな
「ミーアもこのデザインに惹かれたか、よしここに泊まろう」
「らっしゃいあせー!」
宿に入ると看板の通り明るく迎えてくれた。
どこかのラーメン屋みたいに明るすぎる気もする
「二部屋空いてないか?」
ミーアと同じ部屋に泊まるわけにもいかないのでもちろん二部屋を希望する
「すいません、あいにく一部屋しか空いてませんので、二人で同じ部屋にお泊りいただくしか……」
俺は別にいい、というか嬉しいが、ミーアの許可が必要だ
とりあえず確認してみるか
「ミーアどうする? ミーアがよければ泊まれるんだが」
「私も全然OKだよ、ユータさんと一緒なら誰かに襲われても追い払ってくれると思うから、安心して寝れるしね」
本当に!いいの!?やった!
俺はどうやら用心棒らしいが同じ部屋に泊まれるのは嬉しい
「そうか、じゃあ一部屋頼む」
嬉しい気持ちをどうにかして顔に出さないように平静を装って話す
「かしこまりました」
案内された部屋はドスタの宿よりは少し質が悪いがいい部屋だった、銀貨6枚という値段以上だ
それに肝心のベットはやはり一つしかなかった、当たり前といえば当たり前だが……
今日は固い床で寝るとするか、さすがに二人で並んで寝るのはありえないしな
「ミーアはベットで旅の疲れを癒してくれ、俺はそこら辺で寝とくから」
「ユータさん床で寝るの? さすがに悪いよ、隣で寝る?」
ミーアがベットの端に寄って空いたスペースをポンポンと叩いて誘ってくるが
俺はなんとか欲望を理性で抑えることに成功した
「いや、パーティだからといって、俺は女と寝ることはできない、おやすみミーア」
せっかくのチャンスだったが少し強引に会話を切って目を瞑る、苦汁の決断だが仕方がない
一緒のベッドに入ると何かしてしまいそうで怖かったのだ
そう割り切って俺は頬を冷たい床の上に重ねるのであった……
朝起きると床の上で寝てたのとミーアと同じ部屋でなかなか眠れなかったせいで体が痛く、寝不足の症状がでてる。
魔法で痛みを和らげようとも思ったが「ヒール」で回復できるのはHPだけだと思い出したので体は痛いままだ
「ユータさんおはよう」
ミーアは両手を伸ばして伸びをしながら朝の挨拶をする、今日はほぼ同時に起きれたようだ
いつもは俺がミーアを起こしていたから
久しぶりに声をかけずに済んだ
「おはようミーア、今日からはやることがたくさんあるから覚悟しとけよ」
今日から塔のレースまでちょうど30日だ
それまでに俺たちは
1000万z稼ぐこと
銅ランクに冒険者ランクを上げること
仲間を一人増やすこと
の3つを達成しなければならない。冒険者ランクの方は星の数が多いクエストをたくさんこなせばすぐまではいかないが1カ月以内には余裕で上がれる。
普通銅ランクというのは上級冒険者と呼ばれる全冒険者の10パーセントほどが所属しているランクでどんな天才でも1年はかかると言われているが……
それを一月で達成しようものならまた怪しまれてしまうが仕方がない
お金の方はいざとなったら俺の付けている太陽光発電式の腕時計を売れば1000万zにはなるだろう、そうしなくてもクエストのついでに素材を売っていけばすぐに溜まるはずだ
3つの中で一番難しいのが「仲間」だ。
俺とミーアは銅ランクになる予定なので、新しい仲間にランクは必要ないが、塔はダンジョンだ危険もたくさんある。
せめて足を引っ張らず死なない程度の実力が欲しい、しかしその実力を持っているのは銅ランクくらいからで
この街に来る銅ランク以上の冒険者は大体がレースに参加するため来ているのだ
つまり新しい仲間が見つかる可能性はかなり低い
ニーナさんは俺のレベルは確実に超えているので実力的には問題ないがドスタはここから往復20日かかるため現実的ではない
「ランクとお金はどうにかするとして仲間がなぁ」
俺が仲間を集まるための方針が決まらずグチを言ってるとミーアが口を開く
「ユータさん、ウォータイガーの時の杖ってまだ持ってるよね、アレ使っちゃえばいいんじゃない?」
悪魔召喚の杖……か確かうまくいけば悪魔を使役できるんだっけ
成功すればパーティメンバーが増えるし、悪魔族はゲームでは最強クラスの敵種族だったので戦闘能力も申し分ない
それに敵であった悪魔が仲間になるのは魔物使いとは違った楽しみがあると思う
「ミーア、それだ! 悪魔を召喚するぞ」
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