第03話;脳内変換王子はとび蹴りを食らう(前編)

カーディフ王国は、

西に魔物の生息地のガゼフ山脈、年に2回大規模な魔物討伐が行われている。

それでも魔物の恐怖はぬぐえないので、不定期に冒険者組合にに討伐家頼が出されている。


北には今も交戦状態のソルビット帝国、2年前にブライアン王子が『銀色の死神』と言われる切っ掛けになる大規模戦闘があった、魔物討伐の時期を狙ったものだった.

軍隊が2分されたため、カーディフ王国側の軍勢は4万、対ソルビット帝国側は10万の大差であった。

しかし、化物染みた能力の王と、その若い王子と『皇女』、トップクラスの騎士団も桁違いに強かった、後方で強化と防護魔法、攻撃魔法を同時に放てるもう一人の王子も桁違いだが、それらを総指揮しているのがまだ16歳の女の子、異様だった。

ソルビット帝国は1/4の戦力を失い、対してカーディフ王国はほとんど損失が無かった。

カーディフ王国の勝利である。



東にはカンジナバル公国、宗教国家である。

女神が絶対神と崇める規律の厳しい国である。

その国の王女が不倫のあげく身籠り、断罪を恐れた王女がカーディフ王国から来ていた【縁談】に飛び付いたことを知ってるのは本人のみ?である。

人間関係でトラブルが多かった王女は速攻カーディフ王国に送られた。

ただ彼女の誤算は、王女で一人目の王妃なので正妃になれると思って居たら、ずっと側室のままだった、王が側室の元を訪れたのは婚儀の日のみでそれから19年一度も王が側室の元を訪れることは無かった。

婚儀の翌日に送られた綺麗なブレスレット、着けたら外せなくなったが、王からの贈り物なので有頂天になっていた。それが魔力封印の魔法具だと知らずに。

彼女の魔法は魅了、カンジナバル公国で、あまり綺麗でも性格も良くない彼女が男をとっかえひっかえ出来たのはそのおかげである。

カーディフでも同じように男性に声をかけていたが誰も引っ掛からなかった、魅了魔法を使っていた自覚がないので封印されたのも気がついていない。

正妃になったのは、5大公爵家のひとつから嫁いで来た魔術も剣義も得意な美しく優秀な公爵令嬢だった。

公爵令嬢が生んだ双子の兄妹もとても優秀だった、何度も公爵令嬢のもとに通う王を見かけている。

もう一人の側室は庶民だか優秀な魔術師で、その庶民のもとにも通う王の姿があった。

ずっと孤独なまま、自分が生んだ王子が失脚したため王宮から離宮に移されほとんど幽閉状態になっている。



南には海が広がり、海の向こうにあるのがカーディフ王国の同盟国であるボルティモア。

自然豊かな島国で手工業が盛んな貿易国家である。

宗教的には大陸カーディフやカンジナバルが女神信仰に対して、自然信仰の国である。

鉱山を多く所有しているカーディフ王国の、一番の交易相手であり技術共有も行っている。

君主はいるが、この国は議会制度を取り入れており、君主といえど絶対的権利はない、国民が選んだ議員が国のあり方を決めている。

議会が決めたこと君主が了承して物事を進めている。

君主が否と言ったら再度議会に戻し再度検討、君主が応と言うまで続く。

しかし君主が議会が決めたことを否と言ったのはほとんどなく、過去1回のみである。

19年前カンジナバル公国が異教徒のボルティモアに対して無理難題言って来たことがあり、カンジナバル公国からの魔石の輸入が滞ったことがある、カンジナバルからはボルティモアの人権、文化をすべての否定され有無を言わさず降伏を言い渡された。

その時議会は国民全員で戦う戦争を決定したのだった、しかし君主ははじめて否と宣言したのだ。

その後再度議会で話し合われ、カーディフ王国に仲介を願うことが決まった、一貿易相手の国にお願いしても承諾してもらえるか解らなかった。

カーディフ王国からの返答は了承、さらに同盟の提案。

もちろんカーディフ王国からは関税の緩和と技術共有の要求はあった、それでも同盟の提案はありがたかった。

ボルティモアに戦旗を翻すと言うことはカーディフ王国とも敵対することとなる。

軍事大国のソルビット帝国と変わらぬ戦闘力を持つカーディフ王国、カンジナバル公国は、手を引くしかなかった。

そこでの話し合いで取り決められたのがカーディフ王国とカンジナバル公国、ボルティモアとカンジナバル公国とそれぞれの国同士の人質交換である。

カンジナバル公国からカーディフ王国へは第一王女、側室となり王子出産。

ボルティモアへは当時7才の第5王子。

小さかったこともありあっという間にボルティモアに馴染み、ボルティモア軍の大隊長になっている。

カンジナバル公国にはカーディフ王国からは王の従姉の公爵令嬢が、

ボルティモアからは君主には子供が居ないので甥に当たる12歳の子が送られた。

二人ともカンジナバル公国の改革に貢献、現在は3国は良好な関係になっている。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

皇女クレセントは、ボルティモアとカンジナバル公国への親善大使日程を終え早朝帰って来ていた。

王宮を旅装束の騎手の姿のまま颯爽とマントを翻し兄の部屋に向かい歩いている。

兄の部屋の前につくと仁王立で扉を見ている。

朝の清掃をしている近くにいたメイドが達がクレセント皇女に気づき

「クレセント皇女殿下!?、」

「お兄さまの所に誰か来てるの?」

「あ、いえ何方も訪問されて居りませんが」

「そう・・・・」

スッと構えるとドアに向かって行きなり蹴りを繰り出した、

《バキバキ!ドンッ!!》

1つの蝶つがいでかろうじて吹っ飛ばない状態で半壊したドア。

数人居たメイドの内、古参のメイド以外は声もでないほど驚いていた。

「1時間後に朝食を3人分運んでちょうだい」

「かしこまりました。」

古参のメイドが答えた。

声もでないほど驚いていたメイドは『3人分?』と不思議がって居た。

一息置いて兄の部屋に入っていくクレセント皇女。


部屋に入るとベットの方をみた、

「クー・・相変わらずどういゆう訪問の仕方だ」

裸の上半身を起こして呆れた顔でブライアン王子は言った

「おはようございます、お兄さま・・・・とフレイア様」

ブライアンの横の盛り上がっているところをみてクレセントは言った

「一応最中だと悪いので1拍置いてから入って来ましたわよ。結界を頑固に張ってらしたから蹴りを数発繰り出さないといけませんでしたわ。」

くるりとベットを背にソファに座った。

「フレイア様、ドアを直してくださいな、そして二人とも着替えて座ってくださるかしら」

すると、大量の魔力がドアに向かって流れていく、巻き戻しのようにドアが元の姿に戻って行った。

後ろで緩やかな魔力の流と衣擦れの音がすると、ベットの方から髪もドレスもしっかりと整えられたフレイアと、部屋着のブライアン王子がゆっくりとクレセント皇女の前のソファに座った。

フレイアは真っ赤だった。

「いつもいつも、王宮の頑固な魔導結界を無視してお兄さまの部屋に移転魔法で来るのはどうかと思いますわよ。」

ため息をつきながらクレセント皇女はフレイアに言った。

「正面から堂々と入って来れば結界など張らなくても誰も邪魔はしませんよ、そうしたらドアを何度も壊さなくても良くなるのに」

「そもそも勝手に私の承認無しに入って来るなよ!」

クレセント皇女にブライアン王子は声を荒げた。

フレイアは頬に手を当てながらまだ真っ赤になっている。

「いまさらですわ」

悪びれる事もなくクレセント皇女はそう言って足を組んだ。


「ところで私が居ない間に面白いことがあったんですってね。」

「ディラン兄上のことか?ああ無様なものだったよ・・」

ブライアン王子は思い出しながら言った。

「私もそこに居たならば、とび蹴りのひとつも食らわして差し上げたのに」

そういうクレセント皇女、ブライアン王子とフレイアはぎょっとしてクレセント皇女を見た

「おいおい、今のそなたがそんなことしたらディラン兄上の頭は吹き飛んでるぞ!」

今は何処も異常の無いドアのほうを見てブライアン王子は言った。

「小さい時からむかつくんですわ、自分はえらいんだ、強いんだ、自分に従え、世の中は自分中心で回っているんだ、というオーラを出しているディラン兄上を見ると、とび蹴り、回し蹴りしたくなりますの」

実際物心つくかどうかという時期には、クレセント皇女はディラン王子を見かけると飛びけりをしていた。

「いつからか、私が居る時は、自分の周りに貴族令息かメイドで周りをガードするようになって蹴れなくなったのよね、悔しいわ!」

本当に悔しそうにするクレセント皇女だった。


「そうそ、フレイア様に伝えてくれって、ボルティモアの魔法具研究室からですわ、スプリングが完成したって何のことですの?」

「えっと、自動で洗濯をする魔法具を作ろうと思いまして、水流を回転によって作って洗濯するのですが、回転に振動と音がすごくて、それを受け止めるクッション的なものをうちの公爵家の鋼材技術師と研究してもらってたんです。弾性と強度両方備えたものがなかなか出来なくて・・・」

フレイアが少しおびえて言った、昔から乱暴者のクレセント皇女が苦手なのだ、

「洗濯ならクリーンの魔法で出来るじゃない?」

クレセント皇女が不思議がっている。

「クリーンの魔法は中級魔法なので使える人は2割位で、ほとんどが洗濯板で多くの時間を使って洗っているの、その時間に違う仕事が出来たら、余暇を楽しめたら生活が向上するじゃない?」

「大概あなたは可笑しな物思いつくわよね」

「あれは凄いよな、魔石に貯められた魔力で動く(路面魔石車)まだ一部しか通っていないが、そのうち王都では馬車は要らなくなるな、糞の臭いに困ることが無くなる」

ブライアン王子が目を輝かして言った、かっこいい乗り物に興味深々である


「でも一番の可笑しさは、人に向かって(魔力の流れが気持ち悪い!)って何なのよ・・・」




おもだった貴族は子供が5歳になると「初お目見え会」としてお王様に目通りする行事がある。王様的には小さい時から優秀な人材を選定、謀反を起こさないように懐柔しておくのだ、


この国には義務教育は無い、10歳まで教会が無償で読み書きや計算などの勉強は行けば教えてくれる。

10歳になると各領地ある領主経営の初級中級一貫校に入ることが出来るが、ここは試験と学費が必要である。優秀なら無償の制度もある。

卒業すると下級仕官や大手商社などに就職が出来る。

15歳で成人なので、結婚したり家督を継いだりもできる。

学歴があるのと無いのとでは、縁談も継いだ家の印象も違う。

さらに上を目指すものは王都の(仕官上級学校)に行く、さらに上の上級仕官を目指す為だ、(仕官上級学校)は卒業できれば必ず仕官が出来るし学費も無料、むしろ依頼で遠征に行ったり仕事をすることもあり、給金がでる。ただし入学も難しいが、卒業はもっと難しい。

後は王立学校、初級から上級までの一貫校で貴族のみが入れる学校である。上級学校は優秀で貴族なら地方学校から編入できる。ただし貴族といえど優秀でないものは退学させられる、<王族を除いて>

貴族は上級学校を出るものが多い為、婚期が庶民より遅い。


5歳で王の前で試され、10歳で王立学校入試で試されるのだ貴族の子供は小さい時から家を背負うのある。




「キルビス公爵家の長女フレイア.キルビス殿です。」

呼ばれて父ジーク・キルビス公爵と一緒に王の前に出る。

5大公爵家の一つであるキルビス家、呼ばれたのは2番目である。


2段高い所に豪華な椅子があり王と正妃が座っている、正妃の前に4歳の双子の王子と皇女がちょこんと座っていて、1段下がった所左右に側室の二人、黒髪の側妃の前に第2王子5歳も座っているが第1王子の姿は見えなかった。後で仮病を使ったらしいと聞いた。


「フレイア.キルビスと申します」

かわいらしくドレスを持ち上げ貴族のお辞儀をするフレイア

「そなたがジークのよく自慢しているフレイア嬢か、面を上げ顔を見せなさい。」

フレイアはゆっくりと顔を上げ王を見た。

一瞬フレイアはいやな顔をした、本当に一瞬だった。

切れ者の王はそれを見逃さなかった。

「フレイア嬢?私に何か含むものでもあるのかな?」

戦場で類まれな戦闘力を誇る王が、威圧をフレイアに向かって放ちながら王は言った。

隣でキルビス公爵はびっくりしていた。

結構な威圧を向けられているのに怖がるそぶりも見せないフレイアだった。

むしろ後方で順番待ちをしている他の貴族たちのほうが萎縮していた。

「いえ、そのようなものはありません、ただ王様の美しい魔力がゆがんでいてきも・・・残念だなっと思いまして」


フレイアは前からみんなの魔力の流れが<気もい>と思っていたのだ。

それがはじめてみる美しい魔力の王でも、

綺麗にしたいと思った。

父や父の側近たちは自分をあやしてくれる時にそれとなく綺麗にしていたフレイアだった。

王気(綺麗な魔力)の無いものや、相性の合わない者も居て、そういった者は綺麗に出来なかった。


「魔力のゆがみ?そなた小さいながら結構な魔法が使えるそうだな」

少し王は考えていた

「ジークが私の相手が出来るように強くなったのはフレイア嬢が生まれてからだったな?」

「そういえば、確かにフレイアをあやす度に強くなった気がします、」

何か考えて、王はフレイアを自分の元に呼んだ

「フレイア嬢私の元に来なさい」

キルビス公爵はびっくりして

「王子陛下?それは、しかし・・・」

「来なさい」

フレイアは父親を見てどうしようかと目で訴えた

困った顔のキルビス公爵であった。

後ろの貴族達がざわついている

「行きなさい」

ため息をついて言った

恐る恐る王に近づいていくと王が手を伸ばしてフレイアを膝に乗せた、会場はざわついている。

「王様?」

「残念な状態を治せるかな?」

王は何か確信めいたものを感じていた

「わかりません、でも治したいです」

キラキラとの興味深々の様子のフレイア

「両手をお出し下さい」

王がフレイアの前に手を出すとその大きな手に小さな手が重なり、フレイアは魔力の流れを探って、流れを調整する。


「綺麗~」

そうフレイアがつぶやくと

王の周りが光出した、周りいる王妃や王子達達もその美しさにビックリとそして敬愛の気持ちが湧き上がっていた

それは会場にいた貴族達も同様であった。

溢れる神々しい魔力を見て

「「「あぁこの方は本当の王だ、敬愛できる王だ」」」

そう改めて感じた貴族達だった

王も改めて自分の中の魔力の質が変わった事に驚きと

膝にいるキラキラと目を輝かせているフレイアを見て保護が必要だと感じた。


初お目見え会はその後は滞り無く進みずっと王の膝にいたフレイアは、流石に途中から

(ん?なぜずっと膝に居るのでしょう)

と不思議に思いながら

こちらを睨んでいるクレセント皇女と

こちらを訝しげに見てくる2人の王子の目線が気になってしょうが無かった。

挨拶が終わると立食パーティがあり、そこでやっと王の膝の上から降りたフレイア

早速貴族の面々に取り囲まれて、質問責め

オロオロになって居ると

クレセント皇女が王子達と貴族達を押しのけ、フレイアの元にやって来た

「お父様に何をしたの?」

クレセント皇女は睨みつけて来た


「魔力の流れが気持ち悪い!」


フレイア嬢がクレセント皇女に言い放った。






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