他愛のない話

雨宮吾子

他愛のない話

 淡く棚引く雲の面を見上げながら

 きっとどこにも存在しない

 過去にも未来にも存在しない

 今この場所にしか咲かない虹を待ちわびて

 駅舎の待合室で暖を取る季節の変わり目


 雨季に向けて傾斜を強める気候に

 青ざめた感情の閃きが

 そっと背中に手を伸ばして

 どこかのスイッチを押されたように

 冷や汗が迸る


 雨を好まずして

 虹を好むことの勝手に

 付き合う者のないことは明瞭で

 その孤独を噛み締めながら

 きっと空だけが応えてくれるであろうことを願う


 応えてくれるものがないならば

 今すぐにでも電車に乗って

 南半球へでも行けばいい

 ただそれだけの話

 それだけの話なのだ

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他愛のない話 雨宮吾子 @Ako-Amamiya

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