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@60momc

接待

青羽(あおば)悠太は三十代の独身、大手メーカーに勤めている。


仕事に真面目に取り組む姿勢は取引先から好評を得ている。社内での評判も悪くない。ただ、その真面目さを本人は少し気にしているようだ。


この日、青羽は出張で都内に来ていた。今日の夜はホテルへ一泊して、明日の昼に帰る予定だ。商談が終わると、今後の取引関係をさらに密にしたい先方から手厚い接待を受けた。


取引先の担当者と上司、そこの部署の若手と言われる可愛らしい女の子が酒席を盛り上げる。


「ご結婚はされていますか?」


「彼女はいらっしゃるのですか?」

青羽の苦手とする話題が矢継ぎ早に繰り出される。青羽の答えは全てノーだ。


「真面目で人当たりも悪くはないのに」

と担当者は笑う。


「若いのだからもっと遊んだ方がいい」

と取引先の上司。


「絶対にモテますよ」

と若手の女の子は無責任なことを言う。

 

そう言われることに青羽は苦しさを感じる。そのうちに話は業界内のゴシップへと替わる。青羽は少し安心した。


あまりお酒が強くない青羽であるが、勧められると悪い気はしない。この日はだいぶ酔った。


「今後とも末長く、お願いしますよ」

帰り際に部長がそう言いながら、茶封筒を青羽のカバンの奥にねじ込んできた。


そして、お店の外まで見送られて、三人と別れた。


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