22話

 王の間を出た所で捕まえた騎士に案内をさせて、マリスは城の中を歩いていた。どことなく目の前を歩く騎士の固いことといったらない。緊張してがちがちになっていた。

 そうして暫く歩いた後、喧噪ともとれる、むさくるしい気配がした。――騎士たちの訓練場だ。

 数が少ないな、と言うと受付らしき騎士に「今日の訓練は三班ですから」と答えられた。案内の騎士が受付と何やら話すと、すんなりと中に入れた。

 円形の訓練場を取り囲むように作られた一段一段が大きい階段みたいなものがあった。そこに十数人が座っていて、中央で行われている戦いを見学していた。

 模擬戦が行われているという説明を聞いた後、こちらに気づいたらしい男が近寄ってきた。


「どうした? あれ、この方は……?」

「今日から宮廷騎士団に配属されることになったマリスだ。……以後お見知りおきを」


 無表情で淡々と言い切ったマリスに驚いた男は、まさか女性だとは……とも驚いている。そうして男も自己紹介――野獣のような見た目に反して綺麗な騎士の礼だった――をした。


「はっはっは。マリス殿も――」

「敬称も敬語も要らないよ」

「失礼、マリスも模擬戦に参加するといい。剣も魔法も使っていいからな」


 そうして副班長は噂に違わぬ魔法騎士ならではの戦い方を知るといい、そう言って彼はケラケラと笑った。副班長は実戦で技を見て学ばせようと考えたらしい。


「そうですか」


 簡素に答えたマリスだったが、やる気があると思った副班長は全員に呼びかけた。無駄に周りを魅了する外見と、騎士団では普通見ない女性ということで皆気が散るだろうからという気づかいもあって。

 というか班長はいないのだろうか。


「班長はもうすぐ帰ってくるだろうが、一応伝えておいてくれ」

「はい――王太子殿下の執務室ですよね」


 マリスはちょうど通りがかった年若い騎士を捕まえて副班長が話しているところに聞き耳を立てていた。なるほど。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る