陽ノ下朱里とステイルメイト
夏休み中のある日のこと。あたし、
「陽ノ下と
「え」
しかし話題は最悪なことに、憧れの王子様に、犬猿の仲である童顔と仲が良いと思われていることについてだった。
「なんか伸び伸び話してるっていうのか? 喧嘩するほど仲がいい、の典型だよな、お前らって」
「違いますよ先輩! あれはそういうんじゃないですから! 心外ですよ!」
「そうか~?」
「そうです!」
喧嘩して仲良しに見られるなんてどういうことなの!? まっっっっっったく仲良くしている様子なんてないっていうのに! いい迷惑だわ、あの高校生顔め!
「ぶっちゃけ好きだったり?」
「先輩……、言っていいことと悪いことがありますよ……」
席に座った先輩を上から見下ろし、黒いオーラを纏う。あまりの拒絶反応に、無意識に町田先輩相手にですら、こんな態度をとってしまった。あたしは、すぐにそれに気づいて態度を改める。
「ま、まぁそれは冗談として、じゃあお前はどんな男がタイプなわけ?」
町田先輩もあたしの態度から、言った言葉が地雷だと悟ったのか、別の質問を出した。……少し引き気味な表情を見せながら……。
「そ、それはその……。歳上の頼りになる男性です……」
「ほぉ」
声を小さくしながらもそう答える。好きな人に好きな男性のタイプを聞かれるなんて、これいかに。けどこれって、あたしに少しでも興味を持ってくれているってことよね!
「町田先輩は……、どんな女性が好みですか?」
町田先輩と距離を近づけたいあたしは、大胆にも先輩の女性の好みを尋ねた! さぁ、歳上か歳下か! どっち!?
「そうだな~。これといった好みがあるわけではないけど……」
ガックシ……。
そうですか、特にないですか。まぁ、町田先輩ならどんな女性でも寄ってきそうですものね……。
「けど、どちらかというと歳下の方が好きかもな~」
「!?」
「その気になればJKでも全然オッケー」
「!!!」
勝利! 町田先輩は、許容範囲が広い歳下好きだったわ! これなら身長や容姿が大人っぽくないあたしでも全然範囲外じゃないわよね!?
この後、舞い上がったあたしは、町田先輩の連絡先を聞くことなどすっかり忘れて、業務に勤しんだ。自宅でそのことに気づいたあたしは、ベッドの上で以前と同じように叫ぶことになるのだった。
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