陽ノ下朱里と違い解説

 ある日の昼、お気に入りの喫茶店でラノベ鑑賞をしていた俺にウェイトレスである陽ノ下朱里ひのもとしゅりが話しかけてきた。


「あなた、いつもここで漫画を読んでるわよね?」

「漫画じゃねぇよ。これはライトノベル。小説だ」

「はぁ? しょうせつぅ? 表紙に書かれている絵なんて、漫画そのままじゃないのよ?」

「ライトノベルはそういう漫画チックなイラストで描かれることが多いんだよ。知らないの?」

「何それ? 絵がそういうのなら、内容も漫画みたいなものなんじゃないの? 絵が目当てで読んでいるなら、漫画を読めばいいじゃない」


 そんなめちゃくちゃなことを言ってくるラノベ知らない系女子。漫画もラノベも一緒に見えてしまうようだ。


「ラノベにはラノベの良さがあるんだよ。会話文じゃないところの心情描写とか、文章だけだからこその自由な想像とかね」

「ふぅ~ん? よく分からないんですけど?」

「そうだな~。美術で例えると絵だね。風景画も人物画も一見すると同じ『美術の絵』でしょ? けど、そこには風景画ならではの良さと人物画ならではの良さがある。それと一緒だって」

「つまりどういうことよ?」

「表面的に同じだったとしても、中身の魅力は全然違うってことだよ」

「なるほどね」


 我ながらうまいこと説明できた。朱里もどうやら得心いったようで、先程までの今いち分かっていなかった表情が変わる。


「つまり、見た目は同じ牛乳でも製法や採れる牛の種類、産地によって含まれる成分が違うってことね!」

「何で例えが牛乳なんだよ……」


 低身長女子の意味不明な例え話は、俺にはよく分からなかった。

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