窓辺の姉妹達(Window's Sisters)

Giya

窓辺の姉妹達(Window's Sisters) ーはじまりのときー

<イントロ>


私の名前は、窓辺 栞。窓辺家三姉妹の末っ子。15歳とちょっと。

お姉ちゃん達からは、しーちゃんとかしおりんとか呼ばれてる。

部活は…手探り中。自分でもなにがやりたいのか、よくわからない。


一番上のお姉ちゃんは、茜。18歳になったばかり。

あーねえは、学校では体育会系の部活をいくつか手伝ってる。助っ人?

すっごく元気で、静かなのは、寝てるときしか知らない。


二番目のお姉ちゃんは、舞。もうすぐ17歳。

いつも静かだけど、本当はあーねえより力持ち。

でも、まーねえは、学校では手芸部に入ってる。


私達は、同じ学校に通う高校生。


お父さんは、窓辺 太郎。もうすぐ50歳、なのかな?

お姉ちゃん達は、たろちゃんって呼んでるけど、私にとっては、お父さん。

お母さんは、七海。年齢不詳、ですって。

お姉ちゃん達は、なっちゃんって呼んでるけど、私にとっては、お母さん。


私達は、田舎でも都会でもない、平凡な街に住んでる。

でもね、最近なんだか騒がしいんだ。

たぶん、お姉ちゃん達が関わってると思うのだけど…


あ、また今度ね。




<Aメロ>


私達の家の朝は、割と早い方だと思う。

お父さんの出勤の関係で、お母さんは5時には台所に立ってる。

あーねえはお寝坊さんだけど、まーねえは朝お母さんのお手伝いをしてるんだって。

私は…普通かな。あーねえより早くて、まーねえより遅い。だいたいお父さんと同じくらい。


お父さんは、阿徳物産って会社に勤めてる。ちょっと遠いから、朝は早め。

私達は、明和県立大成高校に通ってる。

部活も学力レベルも特に変わったことは無いかな。

学校へは、毎朝バスで通ってる。学校までは、家を出てから30分くらいかな。

お姉ちゃん達とはなるべく一緒に登校してるけど、あーねえのおかげで遅刻しそうなときは別。


お父さんは、ムコさんなんだって。お母さんの処に婿入りしてきたって。

お父さんの実家は…行った記憶が無いかな。

四国の方らしいけど。


お母さんは、姉妹が多いんだって。

でも、長女じゃないのに、なんでお父さんがムコさんなんだか、ちっとも教えてくれない。

お母さんのお姉ちゃん達の中には、海外に移住して英語しか喋らない人も居るよ。

美緒おばちゃんとか真音おばちゃんとか。


あ、学校のそばに着いた。

停留所からは、お姉ちゃん達も私も、クラスメートと一緒に登校。

学年が違うから、教室もフロアが違うんだ。


お姉ちゃん達は普段ね…あ、また今度ね。




<A'メロ>


あーねえ。身長158cm、太っても痩せてもいない。

髪はぼっさぼさ、どんだけドライヤーかけても直らない。

ドライヤーのかけすぎなのか、少しだけ赤みがかってる。

美人というよりキュート。常に唇の端に笑みが浮かんでる。


まーねえ。身長161cm、あーねえより少し大きいけど、普段おとなしいせいかそうは思えない。

つやつやした黒髪ストレートロングは、青っぽくさえ見える。

ほんわりした見た目で、男の人が見たらきっと美人さんなんだろう。


私?しおりは…身長152cm、ええどうせガリガリの貧乳ですよ(ぷんぷん)

髪はセミロングで少しだけ天然パーマ、普段は後ろで束ねてポニーテールにしてる。

見た目も何も、普通の高校一年生でっす!(やや怒気)


あーやっと終わった。

抜き打ちの小テストと採点と評価と悪かった人は居残りとかひどいよ。

あの先生ぜったいドSだよ。

でもおかげで、お姉ちゃん達と一緒に帰れそうだ。

先にまーねえの部室に立ち寄って。

いたいた。終わりかな?そう、じゃ一緒にあーねえ探そうよ。


今日のあーねえは、体育館かな?あれ、いない…

校庭?え?見えないな…

なにまーねえ、裏って…あ、いた!

あーねえ何やってるの?巣に雛を返す?落っこちちゃったんだ、小鳥さんのおうちごと…

よかったね、みんな無事みたいで。親鳥も戻って来たから、こっちは安心。

さ、一緒に帰ろ。


あれ?バスの時間がタイミング悪いのかな…歩くの?途中まで?

いっくらじっと待っていらんないっていっても…わかりましたぁ。

私だってくたびれてるんだけどな。ぷんぷん。てくてく。

……

………ねえ、あーねえまーねえ、あれ、なに?

なんか変なのが…って近づいてくるよ!なにあれ!!やだ!!!

きゃああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーー




<Bメロ>


しーちゃん!そこで待ってて!!

舞ちゃん!バックアップお願い!!

あたし、茜はそう言い残して背を向けた。

いつものアレに向かって、ダッシュ。


ばーかーやーろーーーーーー!しつけーんだよおおおおぉぉぉーーーーー!!

言うなりジャンプしてドロップキック。外れるのはいつものこと。

ちゃんと着地してから本当の勝負。

後ろでは舞ちゃんがカバンから何か出しているはず。毛糸と編み針、に見えるもの。


アレが反撃してきた。黒い影が伸びる。

スウェーで躱して、パンチを数発。ちょっとだけかすった。相変わらず手応えが無い。

うぜぇ、消えろ!!!

足払いをかけても効果無し。でもアレが飛び上がった瞬間。後ろから光が走ってくる。


舞ちゃん、サンキュ。

飛んできた編み針のおかげか、アレは逃げ出した。

毎度の事ながら、アレが何なんだか、実はよく判らない。

判らないけど、ここんとこ毎日のように襲ってくるから、反撃するまでのこと。

あたし一人の時はてこずるけど、舞ちゃんが一緒だと、今みたいに援護射撃(?)してくれて何とかなる。


まだガタガタ震えて縮こまってるしーちゃんのところに戻って、舞ちゃんとも合流。

さ、気を取り直して帰ろ。

事情は歩きながら説明するからさ。よく判ってないんだけど。


あ、そうそう、ごめんね。また今度。




<Cメロ>


わたくしは、舞。まいちゃんと呼んで下さいますか。

やんちゃなあかねえと、まだ孵化(?)していないしおりんに挟まれて、苦労してますわ。

あかねえはわたくし同様、孵化済みですのに、何も考えていらっしゃらないみたいですし。


わたくし達姉妹が身に付けているものは、実は全て普通じゃありませんの。

たろちゃん(お父様)のお仕事関係のところから、特別に調達していただいておりますわ。

例えば、この編み棒、に見えるもの。

これ実は、チタン合金とカーボン繊維の、ハイブリッド素材で出来ていますの。

とてもしなやかで丈夫で、折れにくいものですわ。

毛糸、に見えるものも、微小なハイブリッド素材を、とても細かな鎖状にしたものですのよ。

これらを組み合わせれば、例えば弓矢のように、いいえ、通常の弓矢よりも強力な道具として使う事も可能ですのよ。

もっとも、わたくしみたいに強い力で使いこなせれば、ですけれども。


わたくしの力に、最初に気が付いたのは、なっちゃん(お母様)ですのよ。

わたくしがまだとても小さかった頃、お洋服やおしゃぶりが妙に破けたり壊れたりするって。

それで、とあるところに検査に連れていかれて、後は…ご想像にお任せいたしますわ。

とにかく、わたくし達の身の回りにあるものは、大抵が何らかの強化素材で出来ていますのよ。


あかねえや、それと先日しおりんが一緒に居るときに襲ってきたアレですけれども…

恐らく、アレはアッチからの威力偵察ですわ。

わたくし達の監視と、実力試験、それにあわよくば鹵獲。

きっとそんなところでしょうね。


わたくし達は、まだアレらに全部ご披露した訳じゃございませんわ。

と申しますか、実はまだわたくし達自身もよくわからない、秘めた力があるみたいなんですの。

特にしおりんは、まだ孵化もしておりませんから、いったいどんな力があるものやら、想像もつきませんわ。


あれまぁ、もうこんな時間。また今度にいたしましょう。




<サビ>


姉妹達は、「制限されざる者(Unlimitter)」である。

通常の人間にはたらいている、自己防衛のための制限(Limit)の閾値が、恐ろしく、高い。

このため、一般には困難な運動や、物事の検知と理解、それに通常発動していない「特殊能力」がある。


姉妹達を襲っているのは、とある国家戦略的情報技術集団である。

その全容や目的は不明だ。

ただ推測できるのは、ほぼ間違いなく姉妹達の「能力」を知るためであろうこと。

ともあれ、今のところ週に1回程度の襲撃で済んでいるのは、やはり威力偵察なのであろう。


栞が居合わせた襲撃の後、茜と舞は何事も無かったかのように日常生活へ戻った。

しかし、栞は、違った。

あの日以来、今まで見えなかったものが見え、聞こえなかったことが聞こえるようになった。

そして、何かを対象として見た場合、それが知らないものであっても、その使用目的や動作原理、更には利用法まで「わかる」ようになった。

要は、「察しが良くなった」とういうことである。


あるとき、栞は、「早九字」というものの存在を知った。

栞は陰陽道に通じるようになった。

またあるときは、「錬金術」の存在を知った。

栞は錬成を利用した、その場には存在し得ない事象を発生させることが出来るようになった。

これらは現代科学では実証が困難な、いわゆる「魔法や魔術」のようなことであった。


ウオーリア、アーチャー、ウイザード。

アレらが茜、舞、栞の姉妹達に付けたコードネーム。

だがそれは表面的な、アレらに対応する際の様子から付けられたものであり、姉妹達の真の姿を捉えたものであるかどうかはまた別の話である。


この先姉妹達が平和な学園生活を送れるのか、はたまたラブコメディになるのかどうかは、わからない。

この続きは、また今度。


観察者(Watcher)記す




<アウトロ>

茜「ねぇねぇ、まいちゃん、しーちゃん。今度さぁ、全学遠足があるんだって。楽しみだね♪」

舞「そうですわね。また騒がしくなりそうですわ」

栞「あの…もしかして私、魔法使い扱いになっちゃうんですかぁ?」


茜・舞・栞「次回の窓辺の姉妹達、”窓辺の更新(Window's Update)”をお楽しみに!」


(あるのか?本当にあるのか?観察者より)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る