179 - 極秘スパイロボット涙の別れ編
俺は政府から派遣されたスパイロボット。これからこの学校に転入することになったがそれは表向きの話。本当の目的は学校で行われている不正な実験や取引を暴くためだ!
そのためにも俺がロボットだとばれないように行動しなければならない。早速これからお世話になるクラスへの挨拶だ。
「今日からこのクラスに転入することになりました。これからよろしくお願いします。」
よし、挨拶はばっちりだ。俺がスパイである以上彼らにもロボットであることを知られてはいけない。不自然なことはせず、彼らとの交流を深めつつ、この学校の悪事を暴いてやる!
おかしい…明らかにみんなの見る目がおかしい…。
何故だ、何故みんな「こいつロボットだろ…」っていう目で見ているんだ。いや、気のせいだそうだ気のせいなんだ普通わかるはずがない!
俺は最新鋭の技術で開発された超高性能なロボットだ。機能だけでなく外見も人間と全く見分けがつかない位精密な作りとなっている。
全身の皮膚は人間の肌と同じ成分で作られていて、毛穴まで再現されている。筋肉も人間工学を極限まで考えられたことで不自然な動きが見られない。それだけではなく、呼吸音や心臓の音も体内のスピーカーによって実際に生きているかのように感じる音質となっている。
そして重要なのは顔のパーツだ。あらゆる機能が搭載されてるが、それら全てが外見で判断できないように作られている。眼や鼻、耳や口なども覗かれる可能性がある箇所は徹底的に調べてカモフラージュされている。万が一にも機械部品が漏れることはない。
だが何故だ。何故みんな俺の顔をみてそんな反応をするんだ。
顔には広範囲に渡ってあらゆる情報を知ることが出来る目と鼻と耳、超音波だけでなく自然な声も出せる口、
そして頭部にある、唯一の攻撃手段である半径5000兆キロメートルを焼け野原と化すこと剥き出しの自爆スイッチしかないはずだ!!!!!!!!!!!!!!!
くそう、このままではまずい。俺がロボットだとばれてしまったらみんなに危害が及ぶはずだ!なんとかして人間だと思われるようにしよう。
まずは右隣の席の彼女に挨拶だ。
「どうもはじめまして、これからよろしくお願いします。」
「あ、どうもよろしくね。そのボタン押してもいい?」
駄目だ…やはり彼女も俺をロボットだと思っているように感じる。一体何がそう感じさせられるんだ。
まさか立ち振る舞いか。そういった動きは予めインプットされてはいるが、必ずしもみんな同じものとは限らない。
ましてや俺を作った大人達と違って彼らは高校生、あまり規律にそった立ち振る舞いではないはずだ。
よし、そうとわかれば早速試してみよう。膝を大きく開け、机の上で腕を組めばかなり高校生っぽく見えるはずだ。このまま前の席の彼にも挨拶してみよう。
「はじめまして、今日からよろしくお願いします。」
「こちらこそよろしく。そのボタンやっぱり自爆スイッチなの?」
また駄目だった…。立ち振る舞いもロボットとは思えぬはずなのに何故なんだ。このままでは任務を遂行することが出来ないじゃないか。何としてでも人間と思われるようにしないと!
そうか、喋り方か!確かにこの口調はいささか堅い気がするな。
ここは学校、勉学を学ぶことが目的ではあるが色んな人と交流を深めていく場でもある。そんな場所でお互い堅い話し方では友情を深めにくいことだろう。
俺も彼らと同じ感じで話しあうべきだ。今の口調は開発員たちによって設定したものだが、当然高校生の喋り方もインプットされてる。
試しに左隣の彼に挨拶してみよう。
「ちょり~す、今日からシクヨロ~。」
「おうよろしく。その自爆スイッチ威力高そうだな。」
またしても駄目だった。ここまでやってもまだロボットだと思われている。こうなってしまっては何もわからない…。一体全体何が駄目だというんだ!
そうか今度こそ分かったぞ。表情だ。表情が堅いせいで人間味を感じられず、ロボットだと思われていたんだ。こんな重要なこと何故今まで気づかなかったんだ。よし今度こそいける絶対いける。今分かったこの最大まで口角を上げて作った笑顔に加えて、さっき試したことも合わせて後ろの席の彼女に挨拶だ。今度こそロボットだと思われないはずだ!
「イエェェェ~イ!!ちょりぃぃ~す!!これからシクヨロ~あげぽよウェ~イ☆(くっそ気持ち悪い笑顔で)」
「よろしくお願いします。そのスイッチは私が責任を持って押させていただきます」
ああああああああああどおしてだああああああ何故ロボットだと思われるんだああああああああああ!!!!!!!!!!どこからでも見ても人間だろうがああああああただ頭にスイッチついた人間だろうがああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!
「ビー!ビー!ビー!」
な、なんだ。何が起こったんだ。
「緊急事態!緊急事態!先ほど理科室の極秘研究実験で想定外の事故が発生!巨大生体兵器が5000兆体脱走!」
なんだって!まさかこの学校ではそんなことが行われていたのか!
測らずとも証拠をつかみとれるがこのままでは全員無事では済まないはずだ。ここはみんなを安全に避難させつつ生体兵器を食い止めなければ。しかし、どうやってみんなを落ち着かせるかだ。
仕方ない、こうなったら…
「みんな聞いてくれ。ずっと黙っていたが、実は俺…政府から派遣されたロボットなんだ!」
「うん知ってる。」
え、まじで?
「いやだって頭に自爆スイッチあるし…」
「この前開発員の娘の子が新しいロボット作ったって話してたし…」
「そのスイッチの発案と威力考えたの私ですし…」
な、なんだと…今まで隠そうとしていたのは全部無駄だったのか…
「そうだったのか…けれど、俺は自分の使命を果たすために兵器を止めにいく。みんな、短い間だったがとても楽しかった。さようなら!」
「じ、自爆スイッチーーーー!!!!!」
その後生体兵器に突撃したロボットの自爆スイッチが無事作動し、半径5000兆キロメートルが爆発に飲み込まれて地球は消滅した。
NEXT……180 - ラスト1日に滑り込むマシーン
https://kakuyomu.jp/works/1177354054885440692/episodes/1177354054885642476
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