十言目



懐かしい香りで充満している。

春の夜。


夜桜の美しさってどこか残酷だ。

見ていると不安に駆られる。


毎年今か今かと待ち焦がれ、

やっと咲いたと思ったら風に散らされていく。

散り際すら美しく、潔い。


こんなに気高い花はないと私は思う。


たった数日の晴れ舞台のため、

また1年、焦がれ続けるのだろう。




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