イケメンになろう

マムルーク

やはりイケメンは得である

俺の名前は無沙育夫(ぶさいくお)。

大学二年生。小さい時、よく周りから不細工! 不細工! と言われ続けてた。

それでもめげずに俺は心はイケメンになろうと人が困っていたら助けたさは、率先して嫌なこともやってきた。

だが中々、人からの評価は上がらななかった。

好きな女性に告白しても「鏡って知ってる?」だの言われた。

知ってるとも。鏡の大迷宮大好きだったし。

俺はその女性をディメンションミラーから現れたような邪悪な性格のやつだなと思った。

違う人に告白したら「種族が違うじゃない、私達だの言われた」

なんかファンタジックな断り方である。一体あれはどういう意味だったのだろうか。

お前は人間じゃない、魔族だからみたいな意味だったのか。

それとも私、エルフ族だからみたいな意味だったのだろうか。

エルフじゃあしょうがないな!


くそ、イケメンになりたい。

そう考えながら横断歩道を歩いていたら、突然トラックが俺に迫ってきた。

「ダニィ!?」

トラックは俺にぶつかった。

俺は目の前が真っ暗になった。


「私は神! 知りたいことがあったら何でも教えよう!」

目の前に白い髭を生やしたハゲのおっさんが立っていた。

「誰だあんた?」

「私は神だ」

「神だと……ここはどこだ!」

「あの世だ。お前には二つの選択肢がある」

「な、なんだ?」

俺は身構えた。選択肢とは一体なんだろうか。

「異世界に転生するか、元の世界に戻すかだ」

おお! まるでラノベみたいな展開。さっきトラックに轢かれたし、まさにテンプレ通り。

しかしここはあえて逆の選択をしてみたい。

「現実の世界に戻してくれ」

「そうか、分かった。しかし、それにしてもお前ブサイクだなぁ!」

なんだこの神、ムカつくな。自分はハゲの癖に。

「よ、余計なお世話だ! 生まれ持った顔なんだからしかたないだろ!」

すると、神は髭をさすりながらこんな提案をした。

「1週間だけお前をイケメンにできるがどうする?」

「で、できるのか?」

「ああ」

これは乗らない手はない。

「なら頼む」

「あれれ〜? 乗せられちゃった? 了解した」


眼を覚ますと俺は部屋で横たわっていた。

「変な夢だったなあ」

ふと鏡を見るとミュージシャン風のイケメン男が映った。

「だ、誰だこいつ!」

自分の顔を触ると鏡の中にいる男もリンクして顔を触っていた。

これは……俺だ! あの神が言ってたのは本当だったのか。なら、こうしちゃいられねぇ!


俺はさっそく街中に乗り込んだ。街にいた女性達は俺に注目していた。

ブラブラ歩いていると暇そうに公園のベンチでスマホを弄ってる茶髪の女性に目がいった。どことなくかつて俺が告白しても振られた相手に似ている。

よし、あの人をナンパしよう!


さっそく女性に近づいた。女性は俺の方を向いた。

「へい! 俺とデートしない?」

すると女性は顔を赤らめた。

「はい……ぜひ!」

やった! ナンパ成功。フィッシング成功!

「お名前、お聞きしていいですか?」

ここは本名じゃなくてかっこいい名前を名乗るか。

「俺の名前は持手杉尾(もてすぎお)! よろしくお!」

「杉尾さん……素敵な名前です。私、遠藤彩花(えんどうあやか)って言います。それじゃ、どこに行きます?」

彩花は行き先を尋ねてきた。ここは男らしくバシッと決めるか。

「夜はサイゼリヤっしょー!」

俺は彩花をサイゼリヤにお持ち帰りした。それ以上でも以下でもない。


帰宅し、俺は満足気な気分なった。

「いやぁ、楽しかった。サイゼリヤまじ最高! イケメンは凄いなぁ」

それから俺は毎日、街でナンパしデートを繰り返した。

このナンパで女を捕まえる速さはおそらくポケモンマスターを目指す少年が一年間で地方を巡る速度と同じくらいだ、と自負している。


イケメンでいられる最終日、俺は自分が通っている大学に向かった。

大学を徘徊していると密かに片思いをしている同じ学部の綾風麗美(あやかぜれみ)を見つけた。何回か彼女と授業で話したことがあった。

よし、最終日の今日は綾風とデートするぞ!

「へい! 彼女!」

「なんですか?」

冷たく綾風は訊いた。

「俺とデートしない?」

すると綾風はゴミを見るような目をしてきた。

「結構です。私は好きな人以外とはデートしないので。それじゃ」

綾風はその場から離れようとした。俺は綾風の腕を掴んだ。

「誰だよ、それ。さぞかし俺よりもかっこいいんだろうな!」

「そ、その人は……決してイケメンではないけれど、困っている人を助けてくれて、嫌なことも率先してやる、とても内面がイケメンな人なんです。離してください!」

綾風は俺の掴んでた手を振りほどき、遠くに去っていった。



次の日になると俺の顔は元に戻っていた。

「はぁー元に戻っちゃったな。でもま……」

心が、内面がイケメンならそれでいいか。

俺は気持ち新たに大学に向かった。

大学に到着すると、綾風が知らない男と話をしていた。

「好きです! 付き合ってください」

綾風は普通くらいの容姿の男に告白していた。

「こ、こちらこそよろしく……」

おおー! カップル成立! 末長く爆発しろ。

そうか……綾風が好きな男は俺じゃなくあの男だったのか。

やはりテンプレ通り、異世界に転生すれば良かったな。


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イケメンになろう マムルーク @tyandora

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