余所事の話 小さな恋の拭えぬ違和感
マールたちがターゲットのとった宿の部屋を調べ上げ、当たり前の事に『魔法剣』どころか何一つ所持品は置いておらず、ターゲットが荷物を持ったまた、登城した際には、ハラハラしながら見守る中、やはり『魔法剣』を王に献上したのかと、肝を冷やした。
だが、エリカを宿に連れ込み、酒を飲み、そのまま寝たのを確認した。
翌日の昼に、ターゲットが再び王都を出てしばらくすると、またも何度か、
そしてその日に、強奪作戦を決行する事となった。
あきらかに二日酔いで参っているターゲットが丸太小屋へと向かっていた。
視認はできなかったが、ターゲットが森に入り、帰宅路を外れた時、鈍感なターゲットはようやく尾行に気づいたようで、森からまた強力な魔力反応が出た。
「リビンスキー! ターゲットが魔法剣を抜いたぞ! 大当たりだ!」
スミシーは興奮している。
「まあ、待て、とりあえず我らは監視だ。部下達が強奪できる確立は半々だろうな」
リビンスキーはマールの目には落ち着いているように見えた。
四人の准幹部はそれぞれ間隔をあけ、ジロ・ガルニエと部下達の戦いを監視する持ち場へと散っていった。
◆
そして監視し始めたマールの目には、
◆
ジロは魔法剣を手によく戦った。
魔法剣は言い伝え通り、手にした術者の魔法を常識外れなほど強化した。
元々は剣と同じ形をした魔石の上を鋼鉄で覆い、魔法剣となったと言われる通り、ジロの放つ火球は強大で、ジロのかける《肉体強化》は素早い上に持続も申し分なかった。
マールは気づかれることなく、《
対人戦闘慣れした様子のジロの粘りにより、実行部隊の手練れは一人、また一人と倒れていく。
マールは常に暗殺任務は成功していたので、これほどの使い手をまだ、見たことがなかった。
ジロも手傷を負いながらも、致命傷は受けない。
ターゲットにより五人を倒されると、後方支援をしていた三人が飛び出した。
ジロは何度も窮地に陥りながらも、ついに最後の一人を斬り伏せた。
マールは感心した。
魔法剣の力だけが素晴らしかった。
マールは今すぐ駆けだしてジロにトドメを刺して魔法剣を自分の物にする欲求に駆られた。
任務どころか、人生において初ともいうべき、激しい性欲にも似たの興奮をマールは苦心しながらもなんとか抑えた。
「
マールは思わずそう、呟いた。そして何かがチグハグで、取り返しがつかないような、焦燥感をなぜか抱いた。
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