ポーターと魔法銃

ゆーの

prologue

 魔法が存在する世界で。

 世界には、魔獣という魔法を使い人に害をもたらす生物が存在していた。


 遥か昔から、人々はそれらと戦うために魔法を作り、発展させ、遂には魔法を用いた刀剣や銃器、そして大規模な魔法を補助するための杖などの武器が開発された。

 しかし、それを可能にするためは良質な魔法石が必要であり、そしてそれらは非常に貴重かつ高価であったために、人々の間に広く普及することはなかった。その結果、それらの武器はそれらの所有が可能な国家や貴族が自国から魔獣の脅威を排除するためだけに用いられ、この世から魔獣を駆逐するまでには至らなかった。

 つまり、国から一歩でも出れば、魔獣が彷徨さまよう中を歩き続けなければならなかったのだ。その結果、国家間の交流は非常に限られたものになっていた。


 だが、そのような中でも国家間交流が絶えることはなかった。

 交易に生涯を捧げる者もあれば、他の国に移住し技術を学ぶ者もいる。旅に生きる者もいれば、愛する人と国を隔てて暮らす者もいる。

 そのような人々が存在するからこそ、この物語の主人公である彼、アルザのような職業、ポーター[運び屋]は存在するのだろう。


 ポーターらには、魔力が続く限り荷物を無限に収納できる魔法道具である「マジックバック」がギルド(運び屋ギルド)より支給される。それと共に、彼らは依頼者の荷物を命に代えても守り抜くのだ。

 しかし、彼らには武器となる魔法道具が支給されることはない。マジックバッグ自体が高価であるためだ。そしてまた、魔獣と戦うための訓練を受けることもない。戦うことが専門の職種ではないからだ。


 それ故に、ポーターは「最弱職」だという人も多い。


 主人公アルザもまた、そんなポーターの例に漏れず、小さな体にマジックバックを肩からかけて国々を渡り歩く。他のポーターとの唯一の違いと言えば、常に相棒の魔法銃と共にあることだろうか。


 彼は、今日も旅をする。誰かのために、自分のために。

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