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真珠麿

第1話 どうでもいい一日

 高校生活も二年目になり四月ももう下旬にさしかかっていた。俺はいつもどうり目を覚ますと窓のカーテンの間から差し込める日差しに俺は目を細めた。ベットから立ち上がり部屋に朝の新鮮な日差しを入れるため窓のカーテンを開けると太陽を見てしまいまた目を細めた。

 今日もいい天気だ。こういう日は空を見上げて何か言いたくなる気分だ。

「あぁだるい」

 普通なら「今日もいい天気!」とか「今日はいいことありそう♪」だとか「今日も1日がんばるぞい!」みたいに語尾に「!」とか「♪」がつきそうだけど俺の場合は逆だな。天気がいいと暑いしそんなにいい事なのかと思う。まあ曇も雨も嫌いだから好きな天気なんてものはないんだけど.....。

ゆう、朝ごはん出来たからはやく支度して食べなさい」

 そんなことを考えていると母さんに呼ばれた。俺はそれに「わかった」とだけ言って部屋着を脱ぎ制服を手に取った。

「~♪」

「スマホのアラーム消すの忘れてたわ」

 スマホを手に取りアラームを消した。

「そういえばアラームにしてる曲って何の曲だっけ。歌詞は確かにいいけどいつも俺が聴くような曲じゃないしな。でも気持ちになれる曲だな」

 俺はアラームに設定している曲を変えずにそのままにした。

 ワイシャツの袖に腕を通し、ボタンを閉めていく。ネクタイを結ぶ際に俺は去年のこの頃を思い出していた。


「ちょっと母さんネクタイ結んでくんない?どうやるかわかんなくって」

「えー昨日お父さんに教えてもらってたじゃない。お母さんは朝ごはんの支度で忙しいから自分でもやりなさい」

 母さんはそれだけ言うと朝ごはんの支度に戻ってしまった。父さんに聞きたいところだが今日は会議があってもう家を出ている。

 このまま学校言ったら健太けんたに絶対にバカにされる。くっそ俺をバカにする健太の顔が容易に想像出来てしまう。マジでどうしよう。

「お兄ちゃん入学して1ヶ月経ちそうなのにまだ自分でネクタイ結べないの?お兄ちゃん昔からそういうの苦手だったもんね」

「う、うるせよ」

 妹ながらいたいところをついてきやがる.....

あやが結んであげる!」

「え?マジで?頼むわ」

 俺は彩に身を委ねた。

「えっとね。これをこうして。こうして。こうこう」

「彩くすぐったい」

 首元でこそこそやられてるのがとてつもなくこちょい。そのせいでピクピクと体を動いてしまう。

「我慢して。うんしょと。はい!出来た」

 近くにある鏡で確認すると確かにネクタイはちゃんと結ばれていた。

「へぇー上手いな」

「でしょー?」

「急ぎの時はまた頼むわ。あと教えてくれると助かるわ」

「仕方ないなー。お兄ちゃんちゃんと結べるようになるんだよ?」


 彩のおかげで今では自分で結べるようになったわけだ。俺らの中学校は学ランではなくブレザーではあったがその時のネクタイは結ぶ必要のないもので第1ボタンを閉めればそこにネクタイのピンではさめばいいだけの物だったためむかしから細かい作業が苦手な俺は入学してしばらく苦戦していた。

 そういえば彩も俺と同じ中学校だったのによくネクタイ結べたな。いや結べるのが当たり前で俺が出来なかっただけか。

 そうこうしているうちに制服に着替え終わった俺はリビングへと向かった。

 父さんは朝食を食べ終えたようでソファに座り何かむずかしい顔をしながら新聞を見ていた。俺は自分の席に座り、むかえ合う彩の朝食が半分無くなっていることから朝食が出来てからすぐ自分を呼ばれたわけではないことを察する。

「悠はやく食べちゃって」

「ん。いただきます」

 みんな家を出る時間がバラバラなため、めったに朝食を一緒にとることはない。母さんは洗い物は一度にしたほうが楽だという理由でみんな家を出てから一人で朝食をとっている。

「ねえ。兄貴」

「なんだよ」

 去年までは「お兄ちゃん」なんて言ってくれて可愛かったのにいまじゃ「兄貴」だよ可愛らしさの欠けらも無い。こんな風なのは学校じゃ絶対に見せない。タチの悪いもんだ。学校じゃあ学級委員を務めてるし、女子バスケじゃあ1年生ながらレギュラー入りしてるし、同じ高校なせいでよく比べられる。まったくいい迷惑だ。

「冷蔵庫にプリンあるから絶対に食べないでね!」

 ああそういえば前食べちゃったんだけ。あの時は結構怖かったな.....

「食べないから安心しろ」

「絶対だよ?食べたら許さないから」

 まだ食べたわけじゃないのになんでもそんなに怒りのオーラを出してるんだよ.....。我が妹ながら怖い。

「わかったから。もし食べたらそのプリン5個買うから」

「10個でしょ?」

 威圧的なオーラで潰れそう。まあ食べなきゃいいだけの話だしな。

「わかったから」

「わかればいいの。お母さんごちそうさま」

「彩もう食べたの?早いわね」

「ちょっと用事がね」

「こんな朝早く何すんだ?」

「兄貴には関係ないでしょ」

 やっぱ怖いわ。一年で人ってああまで変わるんだな。まあ俺も人のことは言えたの口じゃないけどさ。

「じゃあ、いってきまーす」

 彩は隣の椅子に置いてあった鞄を持つと玄関へと向かった。

「気をつけるのよ」

 母さんは台所から彩の後姿を見てそう言った。

「俺もそろそろ行くよ」

「わかったわ。いってらっしゃい」

 父さんとは喋らなかったな。まだ新聞見てるしそんなにおもしろいものなのか新聞って。そんなこと考えてもしかたないかいまから学校行くわけだしな。

 またどうでもいい一日の始まりだ。

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