fuga

柔らかな言の葉を、轟々たる音像に乗せて。不完全な贋物がんぶつ何人なんびとかを魅了しえた。


また別の、妖艶な贋物に脳梁を支配され、すすがれた心に、怒りと葛藤。空虚な器に流し込まれる、センチメンタリスムと破滅への一途。


幾許の時を経て、淀みきった空箱を、新たな名前のない音が駆け抜ける。生まれたばかりの遁走曲fugaたすけられながら、私は途方も無い有限を、今一瞬に限り走り抜ける覚悟を呑んだ。悔しさが遣る瀬無さに返らぬよう。

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