見様見真似3

[前回までの話]

 よーし、プログラミング頑張っちゃうぞ


 キーボードに指を置いてから十分後、私は途方にくれていた。

 画面には基礎中の基礎であるコードが打ち込まれているだけである。自分で打ったわけではない。javaファイルを作ると最初から勝手にこれが記入されるのだ。世の中便利である。


 一体何から書けばいいのだろう。というか、何をどうしたら動くようになるのだろう。

 物凄く初歩的な場所でつまずきながら、キーボードの適当なキーを押したり話したりを繰り返す。

 予め何か書かれていて、どこか直せという場合は対応出来る気がするが、ゼロからの状態だと何から始めればいいのかわからない。ゼロから何かを創りだすのは難しい。


 しかし、こうしている間にも賃金は発生しているわけで、ちゃんと仕事をしなければならない。サボっているように見られたら堪らない。

 空っぽのコードに、まずは処理したいものを記入していく。要するにメモだ。

 メモって大事よね、と頭の中に住んでいる妖精さん(競馬狂い)と会話しながら進めていく。仕様書を書くときだって、まずはメモだ。大体何を書きたいか記載したうえで、そこに肉付けしていく。全部のページの整合性は後で整えればいい。多分私が今立ち向かっている物だって同じはずだ(多分違う)


 メモを書き終えると、今度はネットで似たような処理をしているものを探し始める。「CSVファイル 取り込み Java」とかそんな検索条件で出てきた数多の候補から、馬鹿でも理解できそうなものを探す。

 それを参考にして書き進めていくと、段々と形が整ってきた。やれば出来るとはこのことだ。八割以上がコピペだけど。いいの、別に。これを売るわけじゃないし。


 ファイルを読み込んで、一行ずつ読み込んで、カンマで分割したデータを変数にぶち込む。変数にタグを付与して全体の形を整える。そこまで出来た。

 さて、このままでは一行分処理したら終わりになってしまい、残りのデータが処理されない。なので「データがなくなるまで処理を繰り返す」、ループ処理を入れなければならない。

 これは新人時代にやったから余裕である。比較的慣れた(といっても亀みたいな速度)でコードを入力。これでデータがなくなるまで処理をしてくれるはずだ。

 では試しに動かしてみよう、とコマンドを打った。滑らかな動作と共に処理が開始される。まだファイルを出力する処理は入れていないので、ログに出されるものを眺めるだけだが、概ね想像どおりのものが表示されている。

 やったね、と妖精さんとハイタッチしようとしたが、妙なことに気がついた。ログに出てくる文字列が、ずっと同じなのである。本当は全て違う内容が出るはずなのに。ずっと一行目のデータの内容を出力している。

 嫌な予感がして書いた処理を見なおしてみたら、一箇所盛大に間違えていた。


 おめでとう、無限ループ!

 貴様、歯をくいしばれ!


 慌てて処理を止めると、ログは静かに沈黙したが、ファイルサイズが物凄いことになっていた。そりゃそうだ。無限ループしてるんだもの。

 新人レベルのミスを犯して少し悲しい気持ちになってきた。まぁ要するに私の能力は新人と同等ということだろう。それは仕方ない。甘んじて受け入れるしか無い。いつもは無駄に自信に満ち溢れている私だが、ことプログラミングの前では自信を喪失してしまう。


 こんなことで大丈夫なのだろうか、と思いながら作業を再開する。

 一応、出力するXMLファイルの元は出来た。あとはこれをファイルに書き込んで出力すればいいだけだ。……多分、きっと(次回に続く)

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