本編
さくら / 水円 岳様
熱中すると周囲が見えなくなるタイプのおっさん、世楽です。
たまに『無視された、見向きもしなかった』と苦言を呈されます。
対して『気付かなかった。キチンと主張してください』と返してしまいます。
実に男性的で不遜な態度です。
情緒を解さないクズ野郎の風情だけが漂います。
さくら、散ってしまいましたね。
どうしてそうなってからこの作品のレビューをしようと思ったのでしょうか?
まるで空気が読めていません。
いや、案外そうでもないか。
さくら / 水円 岳様
https://kakuyomu.jp/works/1177354054880383705
○●○●○●
現代ファンタジー。
ここまでお付き合いいただいている皆さんは世楽がファンタジー要素やキャラクターを前面に押し出したタイプの小説を好んでいることはご存知だと思います。
しかし、この作品はそういうタイプとは趣が異なります。
ではこの作品は現代ファンタジーではないのか?
そんなことはありません。この作品こそ現代ファンタジーだ。そういう見方も出来る作品だと思いました。
上手い例えが見当たりません。
例えば『旅猫リポート(有川 浩)』のようなスタンス。
モノ言わぬ存在の側に立って語るような話。
実在する存在を取り上げているのだからリアルだと言えますし、
何も言わぬモノの声など虚構だとも言えてしまえます。
力強い説得力よりも静かに感じる情緒で愉しみたい作品です。
○●○●○●
江戸彼岸(桜)と人との不思議な邂逅を描いた連作短編。
第4話が作者様のあとがきなので、実質3話で構成される作品です。
いずれも桜と人が不思議な遭遇を果たすことからお話が展開されます。
特徴的なのは桜がどこまでも桜であることでしょうか。
主張をしたり我を張ることはあってもその存在はどこまでも樹木のそれである。
それゆえ人とのやり取りに不思議な妙味が生まれていると感じました。
……少し、レビューがもっさりしていますね。
正直にいきましょう。
短すぎる気がします。
嫌いでない雰囲気ですし、不可思議は不可思議のままで良いスタンスで読める作品なので悪いところは特に見当たりません。しかし、その雰囲気や情緒に浸るには話数が少なかったかな、と思います。
結果としてそこまで強いドラマというか胸に響くものが足りなかったと私は感じました。
最終話の内容なんかはリアリティや登場人物の江戸彼岸への想いがあっただけにもったいない。
逆に第2話は悪くはないが『この話でなくてもいいんでないか?』と感じました。
情緒あふれる作品。
動かない者から見た世界。
普段、世楽が書かないタイプです。
こういうものを見て愉しめるのも小説の魅力だと感じました。
○●○●○●
雰囲気で魅せる作品というのも趣があって良いものです。
特に忙しない現代社会にあっては足を止めて普段は目を向けない方向を眺める事こそが、
ある種のファンタジーなのではないか。
そんなことを感じました。
桜の花は散りましたが、葉は人知れずにすくすくと育っています。
新しい門出を迎えた方は桜の花だけでなく、
力強く育ち広がる葉にも目を向けてみてはいかがでしょうか?
世楽は散った桜でお花見でもしましょうか?
お供は長谷川酒造の初聲あたりで。
(やっぱり世楽は情緒を解さない)
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