第5話 レーナ派閥

 アンナとミリーの指示の元二人のメイドが御茶の準備をしたり、少量のチョコレートや一口サイズのケーキ、カナッペ、フルーツ、スモークされたハムやサーモンなどをビュッフェのように並べるのをうっとりとみていた。


 社交室には取り合えず参加決定のほぼいつもの面々が現れ、談笑をし始める。

 私は実質派閥のTOPではあるが、お飾りのため特にすることがないので、いつ並べたのが食べられるのかしらとうっとりと眺めていると何やら入り口が騒がしい。


「何々? 面接って2人じゃないの?」

 私がグッと我慢していたのに、シオンがさっとチョコレートを口に運びながらも、そういって主人である私の傍に控えた。




 実質この派閥を仕切っているアンナとミリーが出入口で何やら明らかにもめている。

「今回の面接予定者は2人だろう。物音からして、明らかに扉の前にいるのは2人ではないように思うのだが……」

 ジークは扉を見つめた。


 エドガーも事態が呑み込めていないようで困った顔で扉に目をやると、すると突然声が聞こえ始めた。

 エドガーが風魔法を使い扉の向こうの攻防の声を届けてくれたのだ。


『レーナ様が派閥をおつくりになるとお聞きしました。ぜひ、私にも面接の機会を』

『うちの領地の特産品の茶葉をお持ちしたので』


 聞こえてきたのは、派閥に入るための面接の機会をと望む、複数人の男女の声、声、声。



「……どうなっておりますの」

 聞こえる声に動揺する。レーナ派閥の活動目的は私の安全のためで、派閥としての活動はせいぜい社交室がもらえたので、ここでお茶しておしゃべりするのが関の山。

 社交界に爪痕を残す気など微塵もない。



「確証はないのですが、私が勧誘した人物から話が漏れたのかもしれません」

 エドガーが真っ青な顔をして皆に深く深く頭を下げた。



「貴族である私の庇護が欲しい平民ならいざ知らず。会話の内容からして今詰め寄っている方は少なくとも貴族。私の派閥は社交界での活動予定はありませんし、爪痕を残す気もない……。所属しているのも派閥に入りたいという煩わしい誘いを断りたい方ばかり」

 そういって、私はエドガー、ジーク、フォルトの顔をみやった。

「派閥の誘いを断る名目であることは大っぴらにしていないからね。はたから見ると領地の方よりはあるものの、同学年の高位貴族がそろった派閥にしか見えないんだろう」

 考察ポーズでジークが客観的にみたレーナ派閥を分析した。




「面接をしたらどうだろうか? 面接はあくまでも形式的に開くだけ。実際加入させるかどうかは、当初の予定通りの人物だけ検討すればいい。納得してもらうためには検討してもらったがダメだったと思わせること。これが一番しこりが残らないと思う。ジークはどう思う?」

 フォルトにしては意外な意見だった。同情心がフォルトにはあって、それが彼のいいところであり悪いところでもあったのだから。

「私も同意見だ。一方的に要求を突っぱねるよりかは、機会は与えられたけれど自分では掴むことができなかったと思ったほうがいいだろう」



「そんじゃ、面接するって方針で話すすめちゃえばいいんだね。アンナ様とミリー様にも話をつけてくるよ。ただ、こういうことがあったからさ。申し訳ないんだけれど、僕はエドガー様が招待した人をいれることちょっとよく思わないな……」

「それは当然のことだと思います」

 エドガーは深く深く再度頭を下げた。





 面接をとりあえず順番に行うというと、とりあえず外の騒がしさはひと段落して。

 アンナとミリーが疲れた顔で中へと入ってきた。

「とりあえず、こちらの準備も必要といって1時間後から爵位の順に面接を行うことにいたしました」

 アンナがこれからのなんとなくの段取りを説明する。

「とりあえず原因は何かわかりまして?」

 私はこそっと、生徒たちに対応していたアンナとミリーにこの騒ぎの原因をそれとなく探った。

 エドガーはこの中で、シオンを除くと一番階級が低い。ゆえに、今回のことをかなり気にしているのは顔をみたら明らかだった。

 エドガーには、進路相談に乗ってもらった仲だし。今回のことで話を漏らした人を加入させる気はないけれど、誰が話を漏らしたかくらいは、今後のエドガーのために耳に入れてあげられたらと思ったのだけど。






「一番広い社交室が開かれたので、高位な身分の誰が派閥を開いたのかをおそらく知りたかったのだと思うのです。私とアンナが対応に出たところ。私たちが出たことでレーナさまが派閥の長を務められると理解したようで。そこから、ならフォルト様はだのジーク様はだの……」

 ミリーがうんざりとした顔でそういった。

「そこから派閥に誰が所属しているのかを確認される流れが起こりまして、そのうち誰からともなく面接の機会をと言い出しまして……そこから収集がつかなく……」

 そういって、アンナは眉間を抑えた。



「普通の派閥ですと、最低でも週に1度は集まってお茶をしながら意見交換などいたしますので。そうなるとお近づきになれると思われたり、有益な情報を聞き出す機会だと思われたようで……」

 あーなるほどである。




 まず、イケメンはダンスが終わると女子生徒が群がるので、すぐにわかりますというのが頭の中でリフレインしていた。

 後ろに4人もいるからだ……

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