ループリベンジ3

 ボクは覚えている限りのシナリオをなぞることにした。

 でも、これまでとすべて同じようにするだけだと、レーナ様とボクは結ばれない。

 そして、多分。結ばれるまでこのほんとーーーーうに意地の悪いことにこのループはきっと終わらない。

 ループさせるんなら、僕の立場とかもう少しましなのにしてよ。

 どうすんだよ。僕庶民じゃん。しかも、教会の手先だしさ。

 攻略難易度どんだけ高いんだよってレーナ様だったらいいそうなことを思わずつぶやいてしまった。



 とりえず、今の目的は血の盟約を結ぶこと。じゃないと、フォルト様やアンナ様ミリー様に不穏分子のボクは排除される。

 僕が受け入れられたのは、レーナ様と盟約を結び絶対服従になったからにほかならない。



 となると、ここでやることは一つだ。

 レーナ様はおそらく僕が教会の手先だともう気が付いていた。ビビらせて、寮に戻らせてからまた追い詰めればいいのだ。



 計算通りにレーナ様は僕から逃れ、僕はフォルト様に悟られないようにレーナ様の後を追ったと誤解されないように去り。

 学園の地下通路を利用し先回りしたのだ。


 前回と同じように、レーナ様はのこのこと寮に向かって早足で歩いてきた。

 その顔には僕をまいたことにほっとしているように見える。

 だけど、残念でした。

「お待ちいただけますか? レーナ様」

「どうかいたしまして……シオン様。あっ、あの、お金が足りないなら、一度寮に戻ればメイドが……」

 にっこりと怯えさせないように笑顔を浮かべているのに、レーナ様は引きつった笑顔で後ろに下がる。



「少しお話をしたいんです」

「申し訳ありません。先ほども言いましたが、私はこの後予定があるのです。なのでお茶の時間は……」

「そんな怯えないでよ」

 その顔でやられると傷つくじゃん。思わず敬語を忘れて素で話してしまった

「おっ、怯えてなど」

 思いっきりどもっているし、目線もちらちらと逃走経路を確認しているのが明らかだった。

 あ~バレバレなんだけどな。

「怯えてるよ」

 僕の指摘にハッハッハと明らかにレーナ様の息が上がる。これが恐怖じゃなきゃ何だっていうんだって感じ。


「どうして僕が……………怖いの?」

 そう聞いた途端、レーナ様は僕に背を向けて走り出し林の中に飛び込んだ。




 あぁ、懐かしい。

 これが、始まりだったなって懐かしい気持ちで僕はレーナ様に時々声をかけながら後を追う。

 林に入ったものの、さてこれからどうやって、これだけビビっている相手と恋に落ちれるんだよって話で……



 あれこれ考えた僕は、まどろっこしくなって、レーナ様の手を捕まえ気に押し付け聞いた。

「ねぇ、僕がさ……あんたのこと好きだって言ったらどうする?」と。

 どうせ、死んだらあのおっさんのところに戻ってやり直しだ。

 どうせ、やり直しになるなら。一度直球でぶつけたらどうなるんだろうって思ったんだ。

「へっ!? シオンが? 私を? いやレーナを好き? いや、いや。嘘つくんじゃないわよ」

 百面相をした後、よりにもよって、あっさりとツッコミを入れてきた。



 そうだよ、こういう女だった。

 鈍くて、するってすり抜ける。

 こんな風に一世一代の想いを継げたところで、ノリツッコミしちゃうような女だった。

 それが、悔しくておかしくて、笑ってしまう。

 そして、僕はレーナ様を見つめてこれまでずっと心の中に止めていた言葉をぶつけた。



「好き」

 たった二文字だ。

 でも、僕はこのたった2文字がずっと言えなかった。

 僕じゃ幸せにしてあげれないから。

 言われたら困るだろうから。

 好きだとか、無責任なこと言えなかった。


 手を伸ばせば届く距離にずっといたのに、唇を何度重ねても僕が手に入れていい人物じゃなかったから。

 勝手にそう決めて、彼女を諦めて、いざ誰かの物になるってなったら。すごく後悔した。

 盟約の縛りがあれば僕は動けないはずだった。

 でも、盟約の縛りは解かれたのだ。


 そしたら、諦められなくなった。だから、白の部屋であんなことを願ってしまったんだ。

 君の運命の人は僕じゃないのかもしれない。だけど、そんなのもう知ったこっちゃない。

 どうせ抜けれないループなら、あきらめてなんかやんない。

 今度は、逃がしてなんかやらない。



「僕にしときなよレーナ様」

「……残念でした。そんなお色気の誘惑には惑わされないんだから」

 思わず、僕はレーナ様の頬を引っ張った。

「ひひゃい、ひひゃい!」

「どーして毎回毎回、あんたムードぶっ壊すかな。まぁ、それがらしいんだけど。今度は逃がしてなんかあげないから、覚悟して。さて、一番大事なことをしないとね」


 僕はレーナ様の手の先を少しだけ傷をつけて、傷口に唇を寄せた。

「貴方を裏切ることあれば、この血が僕を蝕みましょう」





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