第14話 気まずい関係
エドガーとのお茶会は実に有意義だった。
最後に、『皆さんもレーナ様が顔を一度も出されないと気にしていたので一度練習を見に来てください』と言われたので顔を出すことにした。
対抗戦かぁ。自分たちの宝を守りつつ、相手の宝をどのようにして奪うのかってやつだったよね。
そういえば、練習一度も見に行ったことはなかったけれど、どんなことをしているのかしら。
いつもは、放課後になると、アンナとミリーにがんばってと声をかけて私は自由行動だけど。
「今日は二人に見学行ってもいい?」
そう声をかけると是非にと練習場へと連れていかれた。
お誘いされて、次の日に早速顔を出すのは厚かましかったかしらと思ったけれど、私に気がつくとエドガーがヒラヒラと手を振ってきたので、私もそれに答えて手を振り返す。
その様子をフォルトが微笑ましい顔で見つめてるのに気がついて、私は進路相談のせいですっかり忘れていたけれど、フォルトに大きな誤解をさせたままであることに気がついた。
「あの、フォルト後で話が」
傍によって小声でささやく。
「お前なぁ……こういうのは本人がいる前では印象がよくないぞ。時間は取るけれど」
完璧に誤解されていらっしゃる。早く誤解を解かなければ……ややこしいことに。
練習を見に来る段階でジークがいることは覚悟していたけれど、ちょっと気まずい。
あちらもさすがに気まずいようで私に軽く会釈する程度だ。
もう、嫌いって言ったも同然だしね。
今日はシオンは治療のアルバイトでいなかった、きっといたら目ざとく私とジークの異変に気がついていろいろ言われたかもしれないと少しほっとした。
アンナとミリー、そしてフォルトもジークにハッキリ言ってやったことを知らない。
というか、この中でエドガーに至っては私とジークが婚約を解消していることすら知らない。
今日はジークと会話をせずに大人しくしていましょうと思っていたのに……。エドガーが私の手を突然握ったのだ。
「へっ?」
思わず声が漏れたけれど、そのまま一番関わりたくないジークのところへ連れて行かれてしまった。
ジークのほうから少しあえて距離を取ってくれていたのに、手を握られてあっという間に目の前に連れて行かれてしまった。
「ジーク様、レーナ様がお見えになられましたよ」
悪意のない笑顔である。
おいおいおい、いやエドガーは私達が婚約を解消してることを知らないし。先日のカフェでの私とジークのやり取りは他に知っている人などいないから仕方ないんだけれど。
さすがに真ん前につれてこられて挨拶をしないわけにもいかない。
「ご、ごきげんよう。ジーク様」
笑顔がひきつってるのが自分でもわかる。まさか、こんな風に連れて行かれるとは思わなかった。
「ごきげんよう、レーナ」
ジークの笑顔もどこかぎこちない。
「では、私は準備をしてくるので」
目の前に連れてきたかと思ったら、まさかのエドガー、私を置いて気を利かせて退散だと。
止める間もなく、エドガーは駆け足でアンナとミリーとフォルトのところへ行ってしまった。
フォルトが何をやっているんだ? と視線で訴えてくるのがわかる。私も今ジークと二人でお話の時間とか欲しくなかったよ。気まずすぎる。
沈黙である。話すことがない。私の社交スキルは今日は死んでいる。頼むジークのほうから何か話題を振ってくれと思うのだけれど、ジークも困った顔でこちらを見るばかりで話しかけてこない。
そりゃそうだ、私は彼を思いっきり拒絶したのだから。
「い、いい天気ですわね」
困った時の天気の話である。
「そうだね。雪の日は練習にならないだろうから晴れてくれて助かっているよ」
ジークも天気の話題に乗ってきた。
今の私達は天気の話題で繋ぐしかないのだ、今日ばかりは必死に天気の話題をしたマリアの気持ちがちょっとだけわかる。何を話ししたらいいのかわからなかったのだと思う。
「学園都市はあまり雪が降りませんね。パーティーの時にみただけですし」
「クライスト領が異常だったんだ。この国は比較的暖かな地域にあるからね。あと、パーティーの時の雪は私のせいだと思う」
ジークは申し訳なさそうな顔でさらりと、雪を私が降らせましたと答えている。
「雪って……降らせることができるのですね」
「降らせたと言えるのかはわからないけれど、あの時は感情が高ぶってしまって魔力が制御できずに外に漏れあのような形になったんだ」
「局所的に雪を毎日降らせて相手の組の練習を妨害すればかなり有利になりそうですね」
「君はさらっとえげつないことを言うね。でも、まぁ勝つために手段を選ばないのは時としては大事だと思うが、学校行事でそれはよくないと思う」
軽く注意される。
正々堂々と勝負するつもりのようだ。
宝をどのように隠すか、敵が来たときの妨害をどうするかの作戦を話し合ったり。実際に想定して移動するなど、練習は楽しそうだった。
そして、エドガーの風魔法がえげつない。
遠くで会話してるのが筒抜けになるし、目の前で話しているのに声が全然聞こえないのだ。
相手にも風魔法の使い手がいることを想定して、会話が妨害されたときどうするかなど様々なことをシュミレーションしていた。
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