自動人形メイドのいる生活

プル・メープル

プロローグ・出会い(郵送)

「な、なんじゃこりゃ〜!」


彼の名前は桐生院きりゅういん さい。鍋島高校に通う普通の高校二年生だ。両親とは離れて暮らしてる。まぁ、あれだ。寮生活というやつだ。と言っても、この寮に住んでいるのは彩と、寮の管理人の真彩まあやさんだ。見た目は20歳と言ってもバレないくらい若々しい。実年齢は……言ったら殺されるから伏せておこう。


そして今日、彼の家に巨大な荷物が届いた。高さは彩の身長を超えている。横幅は彼の2倍くらいだ。


「いや、まず、どうやって部屋に入れたんだよ!?」


問題はそこだ。いや、そこではない。まさか、当たるとは思わなかった。『自動人形メイド(仮)』が。


あれは8か月前、多分雨が降ってたと思う。なんか嫌なことがあった気もする。正直曖昧だ。学校の掲示板に『新技術!試使用者募集!』という広告が貼られているのを見つけた。どうも、政府が開発している新技術を日本国内で1名だけが使用できるらしい……。1名のみだ……。


たしかその時、「こんなもん当たったら俺、死ねるわ!」とか言いながら応募したような……。


「俺、死ぬのか?」


やばい……、ドキドキしてきた。


実のところ、応募はしたが内容は知らない。


どうも、広告の過大評価に騙されるスペシャリストです。


だが、これだけ大きな箱。メイドというワード。期待できそうだ!


彩は丁寧に箱を開けていく。どうやら、1箇所を開けば、花のように四方に開くように止められているらしい。彩はその留め具を外す。


「う……わ……!」


開いたダンボールの中から出てきたのは……


「お、女の子……?」


色白で、金髪の可愛い女の子……。目は閉じている。


「ん?……説明書?」


彩は説明書を開いて目を通していく。どうやら、今は電源が入っていないようだ。


「電源を入れるには、付属のネジを背中に取り付け、回してください……か。やって見るか。」


ネジ……すぐに見つかった。なんせ、彩の頭2つ分くらいあるから……。


「お、重い……。」


なんとか背中にネジを取り付ける。ちょうど取り付ける穴のようなものがあった。


「よし……回すぞ?」


部屋には誰もいないのに1人で掛け声をしているあたり……キモい……。


ゆっくりとネジが回っていく。ゆっくりと……ゆっくりと……ゆっくりと……。


もう、随分回したと思うんだが……?


「何回回せばいいんだ?」


「もう充分ですよ?」


「ひぃ!」


彩は驚いて尻餅をついてしまった。いきなり喋ったことに驚いたのではない、声が可愛い過ぎたからだ。ロボットなら、もっとカタコトだと思っていた……。


「はじめまして、ご主人様。」


ロボットは丁寧に頭を下げる。本当にメイドのようだ。


「あ、は、はじめまして……。」


彩もつられて頭を下げる。


「そんな改まらないでください。ご主人様は私の主でいられますから。」


ロボットが慌てて彩に近づく。


「あの……?頭をあげてください。」


「いや……無理なんだ……。」


「ど、どうしてですか?」


ロボットが心配そうに首を傾げる。


「もしかして、体調がよろしくないのですか?」


あわあわしているようだ。人間にしか見えない……。だが、それ故に……


「いや、君が服を着ていないから……。」


ロボットは何故か服を着ていない。初めは当選した嬉しさで触れなかったが、冷静になってみると結構やばい……。


「何か問題がありますか?」


「ま、まさか……君……服を着ない派か?」


「いえ、私の開発者、Ms.P様は『こういうメイドとかに飛びつく奴らは変態ばかりだから、服を着るというシステムは作らなくていいだろう、ハッハッハ!』と仰っていましたよ?」


「いや、そいつ……アホだな……。」


「まぁ!P様をバカにしてはいけませんよ!」


「あ、ごめん……君にとっては親だもんね。」


P様が禁止用語のピー様に聞こえたことはスルーしよう。


「あの……」


ロボットがモジモジしている。


「何?」


「私、『君』ではなくて……AYA001と申します。」


どうやら、彩が『君』というのを名前だと思っていると勘違いしたようだ。


「あ、そうなんだね。アヤ、ゼロゼロイチ。」


「アヤでよろしいですよ?」


「そう、じゃあ、アヤ。宜しくね。」


「はい!よろしくお願いします!」


なんだか、もっと驚く場所があったはずなんだよな。もっとしっかりとした顔合わせがあるはずなんだよな……(アニメ的な観点)。

なんだか、すごく軽い出会いみたいになっちゃったな……。でも、一つだけ言わせて……


「早く服を着てくれよ!?」

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