錦糸小 五年一組・炭谷 愛梨 ①

 春休みは短いけれど、何だか久しぶりに学校へ来た気分。クラス替えがないから、美咲ちゃんやリセル、愛美、美帆メイファンや、壮太に悠斗はると、オン君にトウ君、みんな同じ顔ぶれなのに、教室が二階から三階へ移ったせいかどことなく雰囲気が違う。上級生、って感じ。私も少しは変わったのかな。

 始業式で校長先生が「来年は錦糸小学校が出来てから百年になります。今年から、みんなで色々な準備をしていきましょう」と言ってた。

 どんなことをやるんだろう? お父さんも錦糸小の卒業生だから、何かイベントがあると参加するのかもしれない。卒業する時が百周年ていうのも、なんか自慢できる感じでちょっと楽しみだ。


 四年生まで担任だった麻里先生が転校しちゃったのはショックだった。ここ錦糸小に長いからそろそろ他の学校に移動かも……って噂はあったけれど。

 なんとか式を今月の終わりにやるから、その時にまた学校へ来てお別れの挨拶をしてくれるって山野先生が言ってたから、その日は絶対に休まないようにしなきゃ。

 新しい担任の山野先生は、去年は六年生の担任だったから知ってる。知ってはいるけれど話したことないし、男の先生だし、ちょっと緊張する。でも、あんまり怖そうじゃないから、いいか。


 美咲ちゃんとリセルと一緒に帰りながら、二人に相談してみた。

「ねぇ、麻里先生、もう一度学校に来るって言ってたじゃない?」

「りにん式だっけ? 先生、いなくなって寂しいなぁ」

「私、会ったら泣いちゃいそう……」

「リセルは麻里先生に、いろいろ教えてもらってたもんね」

「うん。すごく優しかった」

「それでね、せっかく麻里先生が来るなら、みんなで何かプレゼントしようかと思って」

「プレゼント?」「何か買うの?」

「何か買うんじゃなくて、クラスのみんなで手紙を書いて送ったらいいかな、って」

「それなら、寄せ書きがいいよ。お兄ちゃんも転校した先生に寄せ書き書いたって言ってたよ」

「よせがきって何?」リセルが聞く。

「ちょっと大きな紙に、みんなでメッセージを書くの。麻里先生にメッセージ書いて渡したら、きっと喜んでくれるよ!」

「それ、いいね!」

「寄せ書きの真ん中に、愛梨が麻里先生の似顔絵を書いたら?」

「えっ?私が?」

「愛梨は絵が上手だから、いいんじゃない」

「うん、いいと思うよ」

「みんなもOKしてくれるなら……。書いてみようかな」

「大丈夫。みんなには私から話すから」美咲ちゃんはこういう時、なぜか自信満々だ。

「よし、明日の休み時間にみんなと相談しよう!」

 その気になっている美咲ちゃんを見て、思わずリセルと笑ってしまった。

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