禁止小学校と呼ばれて

 まるで往年の大映テレビドラマのタイトルのようですが、私が通っていた頃はある理由で、こう呼ばれていました。

 それは――自転車に乗るのが禁止。


 校則で厳しく言われていた、ということではなく、入学時に学校から通達を受けていただけだと思います。それでも、当時は親も含めて、みんな素直に受け止めていて「ふーん、そうなんだ」と言う感じ。「なんで、乗ってはいけないんだ!」「そんなルールはおかしい!」などと吠える○○〇もいなかったし、こっそり乗っちゃうなんて子もいなかったので、小学生時代は自転車を持っていないのが当たり前でした。

 繁華街が近くにあり、交通の量も人通りも多いから禁止にしていたようです。理にかなっているし、学校としても交通安全への意識が高く、全校生徒を対象とした年二回の交通安全教室には現職のおまわりさんが来ていました。いつも参加してくれる年配の男性警官がいて、腹話術の人形を使って楽しくお話をしてくれたこと、よく覚えています。


 他にも、交通安全への取り組みとして、小学四年生になると社会科見学の一環で交通公園へ行くのですが、みなさんは交通公園って知ってますか?

 公園の中に信号機や道路標識が設置してあり、自転車やゴーカートなどを借りて遊びながら交通ルールを学ぶことが出来ます。当時は鐘ヶ淵の交通公園(だったはず)を貸し切りにして、一日がかりで遊んだ気がするけれど一つ問題が……。

 錦糸小の児童はほとんど自転車に乗れません。私もそうでした。

 乗る機会がないから練習もしないし、入学前に乗れるようになっていた子だけが自転車に。他の子は補助付きか、ここで練習――。そう、自転車に乗る練習もさせてくれたんですよ、特別に。もちろんチャレンジして、午前中はほぼ練習のみ。これはダメかとあきらめていたら、午後になって急に乗れるようになりました!

 自転車って、何かがきっかけで急に乗れるようになりますよね。一度乗れるようになったら、何年も乗らずにいても乗り方を忘れないし。小学四年生から自転車に乗れるようになった人が、錦糸小卒業生には多いはずです。


 この自転車禁止、卒業と共に反動が来ます。

 卒業式を終えた途端、一斉に自転車を買いました。一週間も経たない内に、友達みんなおニューの自転車に乗って集合。まだ乗れない子もいたので、堅川第一公園(例のラブホ街に面した公園)でまずは練習から始めます。利用する人も少ないし、直線が長いから自転車練習にはもってこいの場所なんです。一日あれば乗れるようになり、次はこの公園でタイムトライアルレース。数日で飽きると、今度は錦糸町の交差点からスタートして、大通りをただただ真っ直ぐ進む、という遊びをしました。

 今日は四ツ目通りを北に、明日は京葉道路を西に。時間だけ確認しながら、ただ真っ直ぐ行けるところまで行って、帰る時間に合わせて折り返して戻る。これなら迷う心配もないし、思う存分、自転車に乗れます。中学が始まるまでの春休みは、こうして自転車と共に過ごしました。

 現在は、四年生になると小学校独自の自転車免許を交付して、免許を持っている子は乗っても良いというルールにしているようです。

 


 ところで、往年の大映テレビドラマ「不良少女と呼ばれて」に主演していた伊藤麻衣子(現 いとうまい子)さんは私と同学年。今から三十数年前、錦糸町マルイの八階にある「すみだ産業会館」で行われた成人式には、新成人ゲストとして彼女が来ています。

 自転車禁止とは全く関係ない話でした。

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